「誰もがプレシャス。」プレシャス ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
誰もがプレシャス。
鑑賞時の衝撃度でいけば群を抜く作品。
アカデミー賞ノミネート(助演女優&脚色で受賞)も
納得の出来栄えだったが、その内容はまさに酷く
プレシャスの置かれた環境には耐え難いものがある。
にも拘らず。。
どうだろう、このプレシャスの飄々とした巨体漢。
彼女の妄想癖には暗い未来などない。
明るく楽しく華々しい世界に身を置いている自分。
その体格で、その容姿で、父親に二度もレイプされ
妊娠・出産経験済み。弱冠16歳で!?である。
さらには母親から毎日のように虐待まで受けている。
それなのに!である。
彼女の巨体はそれを吸収しては排出してしまうのか。
終始「私は私」の精神で前向きな性格が異色で驚いた。
決して、お情け頂戴。お涙頂戴。の女の子ではない。
妊娠が元で学校を退学処分にされたプレシャスは、
校長からフリースクールを勧められ、渋々通い始める。
母親の体罰は激しく、学校など必要ないと言い放つ。
読み書きすら乏しかったプレシャスが言葉を覚えて
友人を作り、自分を擁護してくれる素晴らしい恩人に
巡り逢う。美談のように思える話だが、実際にそうある
べき場所であるべき行為に身を捧げている教師や
カウンセラーなど、おそらくはたくさんいるはずである。
…じゃあ日本だってどうなんだろう。
親の虐待で命を落とした子供達のニュースを見る度、
福祉は行政は何をやっていたのだろうと思ってしまう。
度重なる訪問や保護に徹しても悲劇を避けられない。
そこまで立入れないと親子間の繋がりを示唆してくる。
プレシャスとて、(あんな)母親の元へ帰るのである。
直に縁を切ればいいのに!と思うのは他人だからか。
命だって危険だというのに。。
どの母親にも我が子は「プレシャス(特別)」である。
可愛くてたまらない存在が憎しみの標的となる過程を
まったく身勝手な持論で展開させる母親の告白シーン。
演じたモニークは迫力の演技で私たちを圧倒する。
確かにあのシーンだけで、彼女の受賞に納得がいく。
私は涙ではなく、鼻水がズルズル垂れてしまったが^^;
他にも恩人教師を演じたP・パットンの素晴らしい演技、
素顔のマライアや看護師のレニクラなど大物歌手揃えv
プレシャスに対し押しつけのない恩師たちの実像は、
原作者のサファイアによる実体験からのアドバイスか。
ともあれガボちゃんことG・シディベの交わしが見事で、
大物相手に飄々と巨体を泳がせる。プレシャスがこんな
女の子で良かった。とこれからの苦難を想定するにも
何かしらの希望が見えてくる衝撃的な問題作であった。
ひとつだけ。。
心配事でいえばプレシャスの暴力的な性格である。
(母親似か?)
気に入らない相手をボンボンぶちのめす力を
そのうち反抗期を迎えるであろう我が子に使わぬよう、
大きなお世話とともに、私はアドバイスしたい。
(プレシャスの衣装やメイクも個性的でいい。悪くないぞv)