カラヴァッジョ 天才画家の光と影のレビュー・感想・評価
全2件を表示
ホントはあんたらも クソ歪んで(バロックして) ンだろ? と凄まれるからだろう・・ だからみんなもこの人の絵にたじろぐのではないか。
ウフツィイ美術館では、
入館して程なく、階段の上に掲げられたこのカラヴァッジョに会える。
◆この「バッカス」の酩酊の み姿は、まるで我々も良く知る神、吉祥天女のようだ。
脱力して しなだれた姿勢と美しく艷やかな肌。ふくよかな面持ちに墨筆で引いたような東洋の眉。
豊穣の神さまは、今 ほんのりと桜色で、観ているこちらまでも酔い心地になる。
まずは名画に出会えた感動で満足をする。そんな「バッカス」だ。
しかし、500年前に、この巨大な絵をカラヴァッジョに依頼したフィレンツェの聖職者、そしてメディチ家は、この絵を自分の屋敷に飾って、その絵の下でどんな生活をしたのだろう。
こちらに誘いかけているこの少年の目。滑らかだが、筋肉質な裸。そして漂ってくる美酒と男の香りには、じっと見ていると鑑賞者は平静を保てなくなるはずだ。
果物のカゴの林檎は爛熟を超えて腐り始めており、割り開かれたざくろはその内臓を晒している。
◆そしてウフィツィの出口のそばには、今度は「メデューサの切り落とされた生首の断末魔の絵」がある。
これは丸い板絵で、その展示は丸い盾の裏と表が、ガラスケースの両側から見られるようになっている。
館内でラファエッロを観て心を洗われたあとに、あろうことか、美術館の〆はこれかよ!?と思う。
歩き疲れて飽きてきた観光客に、退出直前にとんでもないカンフルをぶっ刺してくるから、このウフツィイの仕掛けは恐ろしい。
衝撃的だ。
頭からはのたうつ黒いヘビが生え、
切り落とされたばかりの、絶叫し絶命するメデューサの目と口の恐ろしさと言ったらない。心臓が凍り、足がすくむ。
この目を見てしまうと人間は石になるのだ。
そしてこれは既知の誰かの顔に似ている。
顔真似をして、セルフィーを撮ろうとしたら中国人の団体さんが来たので慌てて逃げた。(笑)
「バロック絵画 ※注」は、ルネサンス花盛りのフィレンツェで、人文主義を更に超越し、心や精神のみにとどまらず肉欲や人間の懐疑までをえぐった、とんでもない事件だったはずだ。
カラヴァッジョは観る者を挑発する反社会的行為なのだ。
(※注「バロック」という用語はもともと侮蔑的に使用され始め、作品の強調表現があまりに行き過ぎていて品位に欠けるいびつなものという意味が含まれていた。Wikipediaより) 。
枢機卿デル・モンテ (=実在)は、カラヴァッジョの聖画の劇的な物語性と信者たちへの教育的効果を狙い、その価値を高く買ったようだ。
・ ・
この映画は、
警察に追われ、教会内外からの評価も激しく対立し、危険視され異端視されていた背徳の画家、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ (1571-1610) の物語。
神話の世界から脱し、生きている市井の人間を、それも娼婦や貧民たちをモデルに使って聖人の絵を描いたりするから、彼の絵はセンセーショナルで、見る者の既視感と実感に訴えるのだと判るのだ。
絵かき仲間、飲み友達、療護院の人々、剣を交える恋敵、パトロンの貴婦人、罪人と役人、愛すべき娼婦たち。そのすべてのイタリアの住民・・
彼らが神の創造の下で生々しく呻吟して生き抜いているリアリティを、画家は教会のカンバスにねじ込み、力任せに叩きつける。
剣と絵筆で闘った男、カラヴァッジョ。
「これが私の人生
仲間たちです」
― 名言だった。
映画の撮影は、美術映画としてのこだわりをもって、特に「室内の作りの質感」と「光のさし方」に細心の演出をなしている。
まるで絵のようなシーンの連続だ。
撮影は、道理でアカデミー撮影賞3度のヴィトリオ・ストラーロ。登場人物の光と陰のコントラストにこだわる画家カラヴァッジョとカメラマンのストラーロがタッグを組んでいたわけだ。
そして俳優たちの顔がそれぞれに絶品で美しい。
劇中、療護院で描いた最初の作品「果物籠を持つ少年」は、モデルがまるで絵の中から出てきたようで息を飲んだ。
今でこそ大人気のカラヴァッジョ。
2007年の公開の映画であるが、ゴッホやルノアールの映画のように一般受けせず、興行があまりヒットしなかったのは、やはりカラヴァッジョ推しの好事家の、当時の人口の少なさゆえだろう。残念なことだ。
冒頭のタイトルに流れる「顔のフォトモンタージュ」は、カラヴァッジョの作風を一気に見せるなかなかの手法だったと思うが、
133分というドラマの長さに比較して絵画自体をもうちょっと落ち着いてあれこれ観たかった悔いがある。単元の変わり目ごとにカタログ風に大写しにして挿入するような工夫があっても良かったのでは?
せめてエンドタイトルで画面を分割して、代表作を紹介してくれるとかが欲しかった。
【メモ】
①この“はみ出し者”を、イタリア政府はまたガリレオ・ガリレイやラファエッロと並んでお札の肖像にしでかすのであるから、その美の探求への国家的理解度の“懐の深さ”は、まったくもって羨ましい限りだ。
⇒「イタリア・リラ紙幣の人物」で検索すると興味深い。
②2025年関西万博の「バチカン館」に
カラヴァッジョ作「キリストの埋葬」が特別展示される。
「聖マタイの召命」などの彼の有名作品がどのように描かれたのかのエピソードもあるがそれはどちらかと言えば主題ではない
天才画家カラバッジョ
彼の絵はいち早く近代絵画に近づいたといえる
人間を写実的にとらえ光と陰を強烈な光線と巧みな構図で描く
正に映画のような決定的な劇的な一瞬を切り取っており観るものを圧倒する
本作の劇中にもブリューゲルが登場し彼から影響を受けたということを示唆している
本作は画家にしては他に類を見ない波乱万丈の半生を生きた彼の物語を映画として描く
もちろん、「聖マタイの召命」などの彼の有名作品がどのように描かれたのかのエピソードもあるがそれはどちらかと言えば主題ではない
本作はカラバッジョの型破りなある意味、近代的な自由主義の人間としての生き方が中世において如何に軋轢をおこさざるを得なかったかの方のドラマが主題となっている
なので彼の傑作の数々を映画のなかで堪能し、その作品の解釈をしているものではない
それを期待してみると全くの肩透かしとなってしまうだろう
とはいえ彼の作品が好きで、興味を持ったなら観ておくべき作品だろう
映画として普通に面白く楽しめる
衣装、美術などの考証もよくできている
特にマルタ騎士団の制服は素晴らしい出来映えだった
全2件を表示