「撒き散らしてます」行きずりの街 ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
撒き散らしてます
志水辰夫の同名ハードボイルド小説を、「闇の子供たち」「どついたるねん」などの熱い人間ドラマ描写に定評のある阪本順治監督が映画化。
脈々と受け継がれている東映ハードボイルド作品群の流れを正統に受け継いでいる、これまでにも男性の哀愁、痛み、衝動を描いてきた阪本監督らしい骨太の一品に仕上がった。
柔らかい印象、可愛らしさを武器に現代映画界を戦う昨今のイケメン俳優時代にあって、本作で主演を演じ切った仲村トオルは異彩を放つ。デビュー当時から持ち味としてきた筋肉の隆起、そして悲しさを湛えた男臭さを、本作でも存分に撒き散らし、男性の憧れ、女性の夢としての存在感を発揮する。かつて、同じ雰囲気を映画の中で撒き散らしていた阿部寛、加藤雅也といった俳優陣が、コメディやらTVドラマで当たり障りの無い大衆俳優への道を歩みだしてしまった今、特に貴重な輝きを保ち続けている。
ハードボイルド作品を得意とし、松田優作、藤原竜也などの男臭い人間達を魅力を壊さずに描いてきた丸山昇一の脚本に大いに助けられている本作。ただ、この哀愁、想像力を刺激する間を活かした作り方に、大人の魅力とは程遠い小西真奈美の少女の如き可憐さは、不恰好に映ってしまう。脇を固める窪塚、菅田などが奮闘する中、後悔が残る人選となっていないか。
男性、女性平等に楽しむことが出来る熱気ムンムン、男気ムンムン独特の世界。CGでは語り尽くせない、男の肉体美も楽しめるサービス精神に溢れた1本。
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