「沁み込んで来るシークエンス」シングルマン ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
沁み込んで来るシークエンス
唖然としました。
終わっちゃったよ、という。
「はあ!?」という怒りにも似た気持ちさえ抱きました。
何か淡々と、ある男の人生の中の一日を、只、観させられた気分。
そこら辺のおっさん(境遇や込み入った事情あれど)の心情を詩的に描かれたって…で、あの結末!?という。
そこからですね。
何となしに映画のシーンを振り返る訳です。
彼の一日の行動、回想なんかをツブサに。
すると、いつの間にかじわじわ沁みてるのに気付くんですよ。
心に浸ってる、あらゆる場面が。
彼を追体験してる。
彼の嗜好は関係ない。自分が彼になってる。
自分は彼みたいにゲイではないけど、彼の痛みが手に取る様に感じる。
愛する人の喪失感は一緒ですしね。
と、同時に人生の素晴らしさなんてモノも、一日の生活のウチに幾つも見えてくる、てのを教えてくれました。
一生のウチのほんの一日。それが輝けるってのは結局、自分の見方、目方で決まるんだな、と。
いや、観て良かったです。
ただ、やっぱり万人受けする映画ではないですよね。玄人好きするというか、観る人を選ぶというか。
好かれる人には非常に愛される映画だとも思います。
自分にしたって、観終わってから良さに気付いた訳だし。
暫く、彼が心に住み着いて離れそうにありません。
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