「理由なく癒されます!心の中がお腹空いたら温まるスープで心に元気を!」スープ・オペラ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
理由なく癒されます!心の中がお腹空いたら温まるスープで心に元気を!
TVを点ければ、どのチャンネルも皆横並び一列で、食べ歩き番組オンパレード。やれグルメだの、何処屋の何々が旨いだの、これが美味しいと巷で話題だとか、食べ物の話ばかりの日本TV界。この手の番組には、すっかり食傷気味な私である。しかし、「スープオペラ」と言う一風変わったタイトルに魅かれてレンタルしてしまった。
原作が阿川佐和子氏と言う事でも、きっと好きになれそうで、駄目な映画では無いだろうな?と予想もした。
映画の冒頭で、スープを作り、これさえあればどんな時でもと言うセリフ・・・何故だか
涙が、ポツリと出た。主人公、坂井演じるルイの叔母のトバちゃんが結婚して家を出てしまった後、不思議なご縁で突然ルイの家の下宿人となるトニーさんと編集者の康介にスープを出すシーン。スープの優しい味とその旨さに、ホロリとさせられるシーンだ。そこでも何故だか、もらい泣きをしてしまう私である。
話が逸れるが、私がアメリカに住んでいた時に、体調を崩していると、知人のイタリア系のおばあちゃんが、元気になるからと、パスタ入りのオニオンコンソメスープを鍋一杯に持参して来てくれた事を思い出したのかも知れないが、何故か本当の理由は解らないがそのシーンで涙が急に出た。
確かにスープは腹と心に効くらしい。おかずが無くてもこれさえあればと言う絶品の一品なのだろうか?しかし、その時程、自分が海外にいる事を実感した事もなかったのも事実だった!日本人は、食欲が無ければ、おかゆと梅干でしょ?と普段は梅干もおかゆも食べない私でさえもそう思ったものだ。
それ故、何故ルイの家庭の味の原点がスープなのかは別にして、スープを飲んだ人達の心もみんな、そのスープの味で癒やされる事になるの?と他の料理では駄目なのか理解出来ないけれど、きっと愛情の原点が味噌汁ではなくて、スープであるって事と落ち着く事にした。
昭和の古い家屋と大きな庭、図書館と潰れた遊園地。湘南育ちの私は何処となくあそこ辺りかな?と想い出しながらレトロな子供時代へと逆戻りする。この映画の世界はほぼ現代の筈だけれども、この物語の世界では現実的な、経済活動の忙しい現代社会からはかけ離れた人達ばかりが登場している。ファンタジーなのか、リアルな世界なのかはハッキリと線引が出来ない映画であるため、この映画は好き嫌いが2つに真っ向から評価の分かれる映画だろうけれど、個人的に私は、大好きな部類の映画の1本だ。
50代になってから、新たな結婚生活へと旅立つ叔母のトバちゃんがとっても素晴らしく愛らしく見えるし、失恋を繰り返す事では、凹みもせずにヤケ食いの後は仕事と男に突き進んで行くルイの親友も素敵だ!薄いハムカツは油臭くて高カロリーで嫌いな私であるけれど、この映画、どこか心のふるさとに連れて行ってくれるようで憎めない作品だった。
一人一人生きていくペースに相違はあっても、1歩1歩確実に自分の信じる道に向かって、縁ある人達と共に歩き続ける勇気をこの映画がくれている気がする。