「まるでフィクションのような英雄譚。 シャアやポルコの元ネタじゃん!」レッド・バロン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
まるでフィクションのような英雄譚。 シャアやポルコの元ネタじゃん!
第一次世界大戦におけるドイツの英雄、マンフレート・フォン・リヒトホーフェンの生涯を描いた戦争伝記映画。
戦争映画ではとかく悪役として描かれてしまうドイツ。
しかし、本作ではドイツの視点から第一世界大戦を眺めることができます!珍しい!…まぁ、ドイツ映画なんだから当たり前なんだけど😅
本作の主人公リヒトホーフェンは実在するドイツのエースパイロット。同盟国・連合国問わず、すべてのパイロットの中でNo. 1の撃墜数を誇る、通称「赤い男爵(レッド・バロン)」。
敵国からは「赤い悪魔」として恐れられていた、まさに漫画みたいな人物。
愛機の色を赤く塗っていたという逸話は、『機動戦士ガンダム』のシャアや『紅の豚』のポルコの元ネタになっているのでしょう!…これらの作品に元ネタがあったことを知られただけでも、本作を見た価値あった笑
映画の話運びにはちょっと難あり。
というのも、リヒトホーフェンと看護師ケイトの恋愛がちょっと唐突というか、いつ恋に落ちたの?なんでそのタイミングでキスするの?みたいな感じがする。
激戦のさなか、無理やり2人をくっつけたみたいな強引さを感じてしまった。
戦場の描写も不満がある。
2008年の作品ということもあり、ちょっと空戦のCGのクオリティが低い。
まあそれは大した問題じゃ無いんだけど、予算の関係なのだろうか、絶対に必要だと思われる空戦の描写が省かれている。
イギリス軍のエースパイロットであるホーカーとの戦いとか、リヒトホーフェンが頭に傷を負って入院するきっかけになった戦闘とか、彼の最期の戦闘なんかはやっぱり描写するべきなんじゃ無いだろうか。
全体的に戦闘の描写が少なく、リヒトホーフェンの強さが端的にわかるシーンがなかったのは不満。
あと、「軍服を着た外国人みんな同じ顔に見える問題」には本作でも苦しめられた。これって自分だけ?
特に今回はゴーグルをかけているから、尚更顔の見分けがつかん💦
顔と名前が一致しないから、戦友が死んでも「ん、これ誰だっけ?」となってしまい、物語に入り込めなかった。
とはいえ、個人的には満足!
やっぱり空戦を描いたパイロットものは燃えるっ!🔥
自分はミリオタでは無いですが、クラシックな飛行機って観ているだけでなんか興奮してしまう。
戦争映画としては定番の、部隊内でのブロマンス、敵軍兵士との友情、上層部との軋轢、美女との恋愛がきっちり描かれており、エンタメ的に楽しめる。
同時に、戦場の悲惨な現実や英雄として担ぎ上げられる青年の葛藤も描き出されており、戦争について考えさせられる。
CGはショボいですが、1910年代のドイツやフランスの街並みのルックは非常にクール!
登場人物たちのファッションもオシャレで、視覚的に楽しめる。
フライト・ジャケットにマフラー…。この組み合わせに萌える😍
リヒトホーフェンを演じたマティアス・シュヴァイクホファーという役者、彼が素晴らしい!
細身の長身に賢そうな顔つきは本当にエリート軍人のようだった。
天才特有の他人の気持ちがわからない感じ、貴族出身であることを表すスマートな立ち居振る舞いを、見事に演じておられます。…絶対に名前を覚えられないけど💦
飛行機が発明されてからわずか10年。
開発後、すぐさま戦争の道具にされてしまった悲しき機械。
リヒトホーフェンをはじめとする若きパイロットたちも、始めは純粋に空を飛ぶことに喜びを見出す普通の青年として描かれる。
戦況の悪化に伴い、徐々に人殺しの駒として扱われていくことになる彼らの葛藤と悲しみが描かれた、本作は戦争映画の秀作である。
オスカー・ワイルドの名言、「愛国心は野蛮な美徳である」。ドイツの英雄が引用すると、この言葉の意味は限りなく重くなる。
非常に興味深い設定の映画なので、もっと知名度があっても良いと思うんだがなぁ…。