劇場公開日 2009年11月20日

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「彼らにとって正しさとはいったい何?」ロフト. R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0彼らにとって正しさとはいったい何?

2024年3月18日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

秘密基地であるLOFT 密室で起きた殺人事件… この作品はベルギーで大ヒットしたようだ。
見どころは誰が何の目的で彼女を殺害したのか?
警察を呼ぶまでに彼らが結論を出し、そのための工作をする。
割と単純な物事だが、彼らの交友が時系列で表現されて、死体発見時の出来事は時系列をバラバラにつなぎ合わせているようなところが、この作品のある種の面白さとなっている。
取り調べでは彼らの目論見通りにコトが進むが、仕込んでいたはずの遺書がなくなっていたことで、真実の読み違いを正すというどんでん返しも仕込んだ作品。
そもそも妻や家族を裏切って不倫に走る男たち。
彼らはまるで中高生のように見える。完全にガキなのだ。
成功者と金とパーティ 余分な金で作った秘密基地 同じ趣味の親友に鍵
「俺は愛する人を傷つけない」という言葉がいくつか出るが、どの口が言う?と聞き返したくなる。
人はそれぞれ勝手な正義感を持っている。彼らの中にある様々な考え方をこの作品ではよく表現しているが、日本人の視点ではその中に格好良さを見つけることはできない。
そもそも正義など見つけられない。
さて、映像はLOFTで起きたことが時系列をバラバラにして並び替えるようになっていることで、事実関係も難しくなっているが、どこにも彼女を殺す理由はなく、それはやがて妻たちの仕業へと疑念が向けられる。そして秘密の録画によって彼らの妻や不倫関係の女性全員と建築家の男が関係していたことで、この事件をすべて彼の責任として片づける。
「奴が一番悪い」
ここまでを決定し実行する物語なのだ。
そうしてすべての段取りが整えられた後、この建築家がLOFTへとやってきたシーンが、死体の第一発見者となり、仲間らはわざとらしく集まってくることになる。
この描き方のトリックによって、事件の真相がややこしくなるのだ。
見ごたえはあった。
しかし共感できないことが、惜しい…
この作品の主人公役の精神科医の男の行為がある種の正義となっていることが、共感できないのだ。
容疑が晴れて警察署を出る際、建築家の家族が彼を待っていたが、主人公らはそれを無視して帰った。
取調官が話した些細な疑問に、主人公は再び真実を確認しにLOFTへ出かける。
そこにやってきたのは、一番もてない男だった。
彼女の「ダサい」という一言が彼の動機になった。
彼女は薬では死んでいなかった。手首を切られたことが直接の原因だった。
この物語に救いはない。
最後に振り泣いての女性が主人公に会いに来た。彼は今後もまた会うことにしたのは、おそらく今回の事件で妻と別れたからだろう。
こういうのが、ベルギーの正義感なのだろうか? 多様性は認めよう。

R41