「わかっているけど、わかりたくない」パーマネント野ばら Maki69さんの映画レビュー(感想・評価)
わかっているけど、わかりたくない
好き
うしないたくない
つながっていたい
殺してやりたい
大好き
なぐられ、金をせびられ、
くだらない自分へとおとしめられ、
しあわせでもないし、
人生上向きでもない
だけど、これは恋
恋はまぼろしのようで
事実なんか関係ない
好きという気持ちだけが恋の証拠
まるで夢の中でまぼろしと話しているみたいに
夢はかんたんにさめ、
こわれ、
ずたずたになる
心もいっしょに
ばかばかしい
ばかばかしい
ばかばかしい ……
でもしあわせな気がする
それでいい
なおこは、
失ったしあわせを埋めるかのように、
想いの底へと沈み、
本当は他人を受けいれる余裕なんかない
たのしかった、
しあわせだったあの日
もうもどらない
そんなこと知ってる
でも知りたくない
みっちゃんは、
なにをしてもつなぎとめたい恋がある
もうつながってないことは、
わかってる
でもわかりたくない
ともちゃんは、
愛するものが死ぬと、
埋める
死人は埋められると次第にわすれられ、
そうすると本当の死が訪れるから
でも、ぜんぶ同じとこに埋めるから、
たぶんわすれられない
自分を車から突き落とした男も、
ラーメンひっかけた男も、
かわいい飼い猫も、
すべてわすれていない
なんで手に入らないの?
だから、
また追い求めてしまう
大丈夫、
きっとまたしあわせな恋をする…
この映画に、
心にのこらないシーンなんてひとつもないと思う
魚をにぎりしめたまま泣いていたみっちゃん
海にころげおちた新しい自転車を、
だまってあきらめる幼い日のなおこ
数十枚のスロットのコインを『金に換えて』となおこに託す、
みっちゃんのろくでもない弱い夫
恋におぼれるなおこを、
非難の目で見るもも
山奥であばら家に住む垢にまみれた老人のほのかな気持ち
カシマとはしゃぐなおこ
電話ボックスでひとり泣くなおこ