劇場公開日 2010年2月11日

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「ツッコミどころ満載だけど、上映時間中はしっかり楽しめる。」交渉人 THE MOVIE タイムリミット 高度10000mの頭脳戦 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ツッコミどころ満載だけど、上映時間中はしっかり楽しめる。

2010年3月1日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

TVドラマ版は未鑑賞だし、だいいち映画のスクリーンをでかいブラウン管ぐらいにしか考えていない邦画大作の風潮には辟易している僕だが、んな事を言っても今やTV局制作で無ければ邦画でエンタメ大作を撮るのはまず不可能。
どれ今回の場合はどの程度かしらとダメもとで観てみた。

そしたら意外とこれが頑張っているんである。
「邦画にしては面白い」という後ろ向きな誉め言葉はいい加減やめたいが、近年の邦画大作の中では間違いなくダントツで楽しめた。

まあ、緻密な計画の実行グループにドシロートを起用する奴がいるかとか、あのくらいの目的の為ならそこまで大掛かりな事件を起こす必要無いんじゃないかとか、米倉涼子はどうしてやたらと目ン玉を剥くのかとか、その火サスみたいな安いタイトルはどうにかならんのかとか、ツッコミどころは沢山ある。

けど上映時間の間は先読み不能な展開にハラハラされ通しだったのも確かで、特にあの終盤前のどんでん返しにはビビった。本気でビビった。
鑑賞後によく考えるとこのどんでん返しも観客に驚きを与える目的が第一でまるで必然性は無いんだが、鑑賞中は二転三転する物語の勢いに上手く乗せられ、『オイオイどうなっちゃうんだよ、コレ!?』とかなりエキサイト。
娯楽サスペンスとしては悪くない出来だと思う。また、最近の邦画大作には珍しく、ストーリー展開に都合の良いアイテムや人物をなるべく排除しようとする姿勢にも好感が持てる(まあ終盤でその姿勢が一気に崩れるのが物凄く残念な点ではあるが)。
センチメンタルなシーンを長々やって物語のテンポを落とす事も無いし、ドラマの内輪ネタも少なめなのかドラマ未鑑賞者でも割とすんなり話に入れる。
爆破シーンやカーチェイスもそこそこの迫力で、一部CGを除けばCGも頑張っている。

問題は、この映画から『交渉人』のスペシャル版であるという肩書きを外して考えた時、いつかどこかで観たようなサスペンス映画の筋書きと変わらないという点じゃないか。
『交渉人』というタイトルにふさわしい頭脳戦を盛り込むなり、若者を犯罪に加担させた社会の状況をもっと描くなりの独自性が欲しかった。

鑑賞後、特に何も残らない映画だが、細かいこと考えずにポップコーン頬張りながら楽しむ映画としては十分合格点。
けどAランクを付けるには、あと一工夫欲しい。

<2010/2/13鑑賞>

浮遊きびなご