「現実だから、むしろ泣けないのだ!可哀そうじゃ済まないのだ!」犬と猫と人間と jack0001さんの映画レビュー(感想・評価)
現実だから、むしろ泣けないのだ!可哀そうじゃ済まないのだ!
「人間も好きだけれど…、動物のほうがましみたい」
映画の冒頭で企画に携わった稲葉恵子という一人の老婦人の言葉が印象的だった。
この映画の一番痛いところは、いきなり最初から発せられている。
何が痛いか?
それを安易に片付けるには、もう手遅れなのかも知れない・・・人間はもはや犬や猫といった動物たちを愛玩し、その行きつく場所を自分たちのテリトリーの中で抑えてしまったからだ。
野生とは呼ばず、野良と呼ぶ。
そんな些細なフレーズが自然と浮かんできた。
ドキュメンタリー映像として、この映画はかなり質素に扱われていると思う。
カットや画像など、ごく普通に鮮明ではあるが、かなりエンターテイメント性を排除している感覚だった。
それは娯楽性(特に動物をもてはやした可愛らしさや可哀そうさを演出するような路線)からは、一線を引くようなやり方にも思えた。
淡々と語るナレーションは抑揚を感じさせない展開だ。
まるで深夜のドキュメンタリー番組と変わらない映像感覚だった。
だからこそ、テーマが明確に浮かび顛末を心まで堪能できたのだろう。
登場人物、犬や猫たち、彼らは本当に生活の匂いと供にここにあるから、それ以上は期待しないでほしい。
ただ期待できない分の埋め合わせは、ちゃんと真実として映し出されている。
安易に子犬が可愛いとか可哀そうなどという発想は浮かんでこない。
動物映画としてではなく、あくまでも問題意識が前提となっている映画だということだ。
当たり前だがミッキーマウスもドラえもんも出てこない!
彼らがいけないというのではなく、ここでは必要のないキャラだということ、それだけは念頭に入れてから観て欲しいのだ。
監督の飯田氏は様々な場所に出かかる。
犬や猫のいる場所なら多摩川河川敷にも出向いて、ホームレスにも取材する。
イギリスにも足を運び、ペット産業や行政の在り方の違いまで比較させてくれる。
その統計や数値の格差には驚愕するばかりだ・・・不況を言い訳にする日本を知ることにもなった。
もちろん動物愛護団体や殺処分する公共施設にまでカメラは向けられている。
そして何匹かの特徴的な犬や猫の成長の過程も見れる。
とにかく多角的に、現在日本の病んだペット・ブームについての追求心が収められているのだ。
遠い歴史の果てで、何処からともなく手法が編み出されて、僕らは様々な動物を利用してきた。
にもかかわらず僕らは随分と彼ら(犬猫)について、何も知ろうとはしなかったのではないだろうか?
今や産業の拡大や生活様式、様々なしきたり、そして不慮によって左右されてしまう「ペット倫理」は、あまりにも深刻である。
そこでハッキリ言っておこうと思う!
もし、家族がペットを飼いたいという場合、よく確認しておくほうがいいだろう!
良いものは良い!
ダメなものはダメなんだ!
その中間は無いってことだ。
それでも飼うというのならば、共に生きることを書面上や法的に誓うべきだ。
決定的な整備や仕組みを作らない限り、歯止めが利かないだろう。
犬や猫や人間が、モノ扱いにされない為には、運命共同体という意識を草の根から徹底させなければいけない。
学校教育で、主要五科目に入れたほうがいいのでないだろうか?
ペット飼育に関しては運転免許同様に、資格制度にするとか?
道路やダムや、空港のハブ化を問う前に、ペットとの共存についてしっかり予算を組むべきではないか?
最後まで看取れない者があまりにも多いのであれば、どこかで線引きをすべきだ!
色々と心の中で交錯しまくった映画だった。
あまりにも醜い現状だった・・・そんな中、現場の殺処分担当者の幾人かがインタヴュに答え、むしろ彼らは動物好きであったことが何よりも救いだった。
「好きだからこそ、あえて出来てしまう(処分できる)のだ・・・」という。
この言葉は純粋に正直さを伝えていた。
そこで、こう思えたのだ!
動物が好きだからこそ、あえて飼わない、あるいは買わない、ってう考え方もあって然りなんだということを。
おっどあいさんへ
コメントいただきありがとうございます。
これはもうモラルや倫理に委ねるだけの問題じゃなく、モラルや倫理の徹底、それを草の根でやっていく方法を考えないと駄目じゃないかって思います。
住宅状況で融通の利かない不動産屋や大家については、別途それに代わる社会貢献をさせて還元してもらう義務とか?
あと欧米みたいに受刑者の更生プログラムで、盲導犬や警察犬訓練を取り入れるとか?
世間体とか下らない言い訳で捨てたものは、法的に罰するとか?
あるいは逆にペットの飼育について優良な場合は税金を優遇するとか?
そういった具体案をイッパイ集めて公的単位で動かないと、日本の土壌は犬や猫の死体で固められた国になってしまいますね。
この映画を調べていました。
学校で是非、子どもたちに観てもらい!と思っていたところ、こちらにたどり着きました。
通りすがりの者ですが、会員になって、一票を投じます。
”学校教育で、主要五科目に入れたほうがいいのでないだろうか?”
”ペット飼育に関しては運転免許同様に、資格制度にするとか?”
に、とてもとても共感です!!!!!
ウチにも猫がいます。捨て猫でした。まだ目も開いてませんでした。
道端や空き地で見る野良猫や子ねこたちに、同じ人間として、日々申し訳なさを感じています。
”可哀そうじゃ済まない”
全くそのとおりです!!!