「わんダフルに癒されます!ラストがちょっと尻切れトンボでした。」いぬばか 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
わんダフルに癒されます!ラストがちょっと尻切れトンボでした。
B級ながら、スマッシュヒットした作品。
とにかくカワイイわんちゃんが一杯でてくるので、見ているだけでウルルんとなってきます。いぬ好きの目線で撮られているので、いぬばかな人にはたまらないでしょう。
単なるラブコメに止まらず、飼い主と犬の深いつながりを描いていて、見ていて心がほんわかしてくる作品なんです。何と言っても、主人公のすぐりの天然ボケぶりが絶品です。
ただラストが、ペットフードメーカーとのタイアップショットで終わってしまい、哲平店長との恋の行方などはっきりさせないで終わってしまったことが残念でした。
ちょっと泣かされるところが、お客さんのわんちゃんが臨終を迎えるシーン。飼っているひとなら経験があるでしょう。やはりわんちゃんの方がどうしたって先に死んでしまうものです。「わっふる」の常連客ちづるにも、その「まさか」がやってきます。
ちづるの愛犬は、最後のとき、まるで『HACHI』のように犬目線で、ちづるとの楽しい日々を回想して涙し、息を引き取ります。
いっぽう飼い主のちずるは、長年連れ添ってきた愛犬のラストサインに気がつかず、夜遊びにかまけてしまい、最後を見届けることが出来なかったのです。そのことに心から後悔し、愛犬の突然の死に号泣するちづるを見るにつけて、愛犬は家族の一員なんだなぁと感じさせられました。
一緒にいられる時間が短いからこそどれだけその時間を大事にできるか、愛情を持って接することができるかを考えなくちゃいけないんだと思います。
そのあと主人公のすぐるも、自分の愛犬るぱんをそっと優しく抱きしめます。ちづるのようにもっと遊んであげればよかったって、後悔するなら、いま元気なうちに、もっともっと可愛がってあげてくださいね。愛情をいっぱい注げば、きっとわんちゃんは必ず返してくれますよ。
こんな話なんで、主演のすぐる役スザンヌも癒されたひとり。演じているときも顔に、「ワタシいぬばかなんですぅ」と書いているような感じなんです。
また演技では、相棒のるぱんに助けられたというか、スザンヌのほうがNGが多くて、名演技のるぱんの足を引っ張ったというのが実情でしょう。
るぱんはいわゆるタレント犬ではなく、スザンヌに最初からなついてはくれなかったそうです。ところが、毎日一緒にいるうちにだんだん仲良くなり、おやつを持っていなくても呼べば来てくれるようになったとか。画面からもふたりの仲の良さが伝わってきます。
犬好きか聞かれたスザンヌは、意外にもこう答えています。「子どものころに飼っていたいぬを2年くらいで失ってしまった経験があるので飼うことには前向きではありませんでした。」
なんだか劇中の哲平店長の少年期に抱いた犬へのトラウマみたいなエピソードなんですね。哲平店長は、少年時代に捨て犬を買うことが出来ずに、見殺しにしたことを後悔したのです。スザンヌと違うのは、それがかえって責任もって飼える飼い主を増やしたいという使命感に繋がったこと。それで一生懸命をもってペットショップ決意するのです。
この哲平店長のシリアスさが本作に奥深さをもたらしています。演じている徳山秀長は、性格俳優として今後も注目されるキャストをこなしていくでしょう。