劇場公開日 2009年11月6日

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「恐怖と言うよりも、ジョットコースターの乗っているかのようなショックの連続。ホラー嫌いの人には、案外取っつきやすいかも知れません。」スペル(2009) 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0恐怖と言うよりも、ジョットコースターの乗っているかのようなショックの連続。ホラー嫌いの人には、案外取っつきやすいかも知れません。

2009年11月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ホラー作品の怖さにもいろいろあると思いますが、本作品の場合気持ち悪さとか、スプラッターな惨劇は少なく、むしろ見えない恐怖や突然仕掛けられる驚きにドキッとさせられ放しの作品です。
 主人公クリスティンと対決するのは「ラミア」という恐ろしい人食い鬼。本来はギリシャの女神なのに、怒りに目覚めたとき、泣き叫ぶ犠牲者を地獄に引きずり込む悪魔となるのです。ラミアは、本作では影だけで、実態は姿を見せません。けれども足跡を忍ばせて建物の中のものを揺るがし、そのもの音で存在を誇示するところが余計に怖さと緊張感を感じさせました。

 ラミアは冒頭から登場して、いきなり観客の度肝を抜かせます。それは本編に先立つ40年前のこと。霊媒師バサーラは、ラミアとの対決に敗れて、甥っ子を地獄に引きずり込まれてしまいます。

 画面はがらりと変わり、 銀行の融資窓口。空席となった支店次長の座を巡り、クリスティンが支店長に攻勢をかけていました。そんな微妙な時期だけに、クリスティンは功名心に駆られてガーナッシュ夫人の融資を断ってしまいます。
 なんだか『イエスマン“YES”は人生のパスワード』と同じような出だし。でもこのあとストーリーは、真逆に向かいます。

 業務を終えて帰宅しようとしたクリスティンをガーナッシュ夫人は襲い、呪いをかけてしまいます。このあとしつこく登場するガーナッシュ夫人です。夫人役はまさに迫真のがぶり寄りぶりの怪演!序盤のこの時点から充分に不気味でした。そしてこの時点から、前出のラミアがクリスティンを付け狙うようになったのです
 姿を見せず影だけのラミアとのファーストコンタクトが、何とも不気味です。

 早速ラミアの洗礼を受けたクリスティンは、憔悴して、ガーナッシュ夫人に侘びに向かいますが、もはや他界して後の祭。
 相談に出かけた霊能者ラオから、3日間脅した後に、ラミアはあなたの魂を地獄に引きずり込むと告げられたクリスティンは、ラオの紹介する霊媒師に頼ろうと決意します。その金額はなんと1万ドル。家財道具を売り払っても、足りません。そんなクリスティンに助け船を出したのが、交際中の彼氏ジャスティン。彼は大学教授で、唯物論者。端から心霊現象は信じていませんでした。けれども愛するクリスティンの語ることは全て真摯に受け止め、彼女を信じていたのです。
 ポリシーを曲げてまで、クリスティンが降霊会に参加する高額な費用をポンと支払ったのです。ジャスティンの優しさにはジンときましたね。

 このあとの降霊会で、登場する霊媒師バサーラによって冒頭のシーンと40年後の現在が繋がりまするそしてその後は、お決まりの対決シーン。本来ならここで終わりなのですが、あと一歩のところで、バラミアサーラ死んでしまい。
 クリスティンのへの呪いは残ってしまいます。絶体絶命になったところで、ラオから伏せていた呪いの秘密が明かされます。呪いは、クリスティンのきていたボタンにかけられていたのです。
 このボタンを誰かに渡せば、賭けられた呪いは、その人のものとなるのだとラオは打ち明けます。もうあとがないクリスティンは良心の呵責も吹っ飛び、明け方のカフェで「犠牲者」を物色。
 そこへ、出世競争のため彼女を陥れた支店の同僚が、不正を暴くと脅し呼び出されて、ノコノコ登場します。そこで取り出しマシたるボタンが入った一通の封筒。「わたし出すわ」と気前よく、同僚に差し出すと、追及されるもんだと思い込んでいた同僚は、ほっとして、そのボタンを受け取ろうとします。
 果たして、ラミアさんは同僚とラブラブになっちゃって、地獄へ引きづり込み、一件落着となり、エンディングを迎えます。

 と思いきや・・・、このあとクリスティンはなぜか世を徹して、ガーナッシュ夫人の墓を掘り起こして、亡骸の口に、例の封筒を突っ込んでいるではありませんか?
 さらには、そのあとの穏やかな朝。婚前旅行に旅立つ駅で、口に突っ込んだと思っていた封筒と同じものを、ジャスティンがもっているではありませんか。

 何で呪いのこもったボタンが、そんなにあるのか。そして、ジャスティンが最後の60秒にどうなるのか、劇場で確認ください。ラストのヒントは予告編にあります。
 でもアンナ終わり方は、ちょっと唐突過ぎますね(^^ゞ

 恐怖と言うよりも、ジョットコースターの乗っているかのようなショックの連続。ホラー嫌いの人には、案外取っつきやすいかも知れません。でも狭心症のわが心臓は、もうバクバク(^^ゞパンク寸前まで行きました。ああ~苦しかったなもぉ~。

流山の小地蔵