劇場公開日 2012年5月19日

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「惜しい!もうちょっと!」ダーク・シャドウ 銀平さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5惜しい!もうちょっと!

2012年5月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

怖い

単純

まず、この作品は予告編に問題があるのではないでしょうか。

いかにも「面白そう、笑えそう」と先入観を持たせるような“コメディ作品風”に作られています。
ですが、実際の本編は、笑える部分はそれほど多くはなかったと思います。

あの方向性を間違った予告編が原因で、コメディ映画として期待した多くの観客は、鑑賞前のイメージと鑑賞後のギャップに困惑したと思います。

…確かに、あの予告編で世間の関心を集めて、期待度をアップさせる作戦は成功し、宣伝プロモーションとしては上手くいったのかも知れませんが。

私が見た感想は「なんとなくまとまりが悪い作品」。
そして思っていたよりも結構「重くて暗い」作品でした。

一癖も二癖もある登場人物たちを演じる贅沢なキャスティング、豪華な美術、お金をかけた箇所は確かに素晴らしいです。
が、ストーリーの流れが悪くて(特に後半)、全体に一本の筋が感じられず、「あれもこれも」とやりたい事を色々詰め込みすぎたためにまとまりがなくなった感じがします。

主人公バーナバスについて、宣伝チラシには「人を襲うのはちょっと」と書いてあったので、私はてっきり“人を殺さない主義”の吸血鬼なのかと思っていたら、いきなり大量に殺しているじゃないですか。
その後の“食事”の時も、被害者を最小限に抑えるよう努めるわけでもなく…。

コリンズ家再興のために事業を再開して、魔女が経営する水産会社に対抗するという流れは良いんですが、その勝負というのが、およそビジネス対決とは言い難く、吸血鬼の魔力で漁師獲得とか魔女の魔力で工場爆破とか、何でもありのムチャクチャな展開。

そしてムチャクチャといえば、最後の魔女との対決でのクロエちゃん。
「勝手に人の部屋に入るんじゃねえ!!」と、いきなり態度が豹変して「えっ!?どうしたの!?」と思ったら、「モールス」のアビーのような異形の姿ふたたび(笑)。
しかもその肝心な時に、バーナバスは柱に捕まってて役立たず状態(笑)。

バーナバスは「末裔のために繁栄を取り戻そう」と思って色々やってみたけれど、しまいには価値ある財産であろう豪華な屋敷も消失してしまって、バーナバスのせいで状況は前より悪化&末裔はさらに厳しい経済状況に陥るのでは?

バーナバス本人は最後に恋人と結ばれていいだろうけど、周りの人は巻き込まれていい迷惑です。
結局、死んだ恋人に生き写しのあの家庭教師さんの人生は何だったの?
いくら生き写しで、“何か”に導かれてコリンズ家に関わったのだとしても、あの扱いでは彼女が不憫すぎるのでは?
まだ若く、彼女には彼女自身の未来があったのではないでしょうか?

…というわけで、バーナバスさん、いっそ妥協して魔女の求愛に応じたらどうですか?
もとはと言えば貴方が本命の彼女がいるのに、遊びで魔女に手を出したりするから、コリンズ家は呪われたのですよ。
魔女に迫られた時、断固拒否しなかったところを見ると、全く気がないというわけでもないのでは?
何しろ彼女、顔も身体も完璧ですから。

…つまり、全ての騒動はバーナバスの撒いた種が原因だと思いますが、それを言ってしまってはこの映画の意味がなくなるので。

それにしても魔女役のエヴァ・グリーンはハマリ役でした。あのセクシー度と執念深さは最高。嫉妬に狂った彼女が爪で引っ掻く動作がいかにも魔女らしくて◎。
ミシェル・ファイファーもカッコよくて強い女だったし、クロエちゃんや長老クリストファー・リーやアリス・クーパー。
そう、キャスティングは文句なしに豪華なんです。
あとはもう少しさじ加減がよければ、もっと面白い作品になっていたと思うので、もったいなくて残念です。

それからもう一つ、欲を言わせてもらえば、最後に「コリンズ家とバーナバスのその後」的なアフターストーリーがあると良かったと思います。
ラストシーンは少々物足りなかったし、バーナバスと恋人と末裔たちが、あの騒動の後どうしたのかを見せて欲しかった。
例えば、お金も家も無くしたけど貧しくも皆揃って仲良く暮らしているとか。
バーナバスのモットーは「家族が大事」だから、それに沿った分かりやすいハッピーエンドだったら良かったなぁと思います。
で、その後であのホフマン博士の水中シーンをもってくれば(笑)。

銀平