「内へと籠もる巨大脳内世界」エンジェル ウォーズ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
内へと籠もる巨大脳内世界
ザック・シュナイダー初のオリジナル脚本作品は、
彼のギーク(オタク)な趣向がこれでもかと詰め込まれた映画。
女の子、セーラー服、露出度高な戦闘服、
日本刀、近代兵器、サムライ、ナチ、ドラゴン、ロボット。
……な、なんてヤミ鍋な。
このギークな感じといい邦題といい、なんかこう……独りで観るには度胸がいる映画でした。
何はともあれ映画はアクション満載。どのアクションシーンも趣向が凝らされていてヒジョーに楽しい。
最初の戦闘シーンはマンガ的な、ダイナミックな構図と演出が見もの。
第二次世界大戦みたいな戦場でのシーンではCGばかりでなく、
生身でこなしたアクションをしっかり見せる点に好感が持てる。
中世ファンタジー世界のシーンは「『指輪物語』ですか?」とツッコミたくなるが、
中世世界+モンスター+近代兵器+日本刀と、ヤミ鍋度が最も高くて楽しい。
最後の戦闘シーンはシーンまるごとをワンカットぽく繋いで見せる大胆な演出。
監督お得意のクイック&スローを多用したアクションもバリバリ使い、
“これぞザック・シュナイダー!”なシーンに仕上がっている。
役者陣も頑張った。
主演のエミリー・ブラウニングをはじめ、
アクションのイメージが全く無いジェナ・マローンやアビー・コーニッシュも
怒涛の立ち回りを見せる。
あと、登場する度にイチイチ名言を残していく激シブ親父スコット・グレンが良い味。
「ああ、それからもうひとつ」って、あんた警視庁特命係かッ。
と、アクション映画としてはかなりの満足感を得られるのだが、
肝心の物語はけっこうダウナー。
この監督って、こういうなんだかスッキリしない話が好きですねえ。
最後のメッセージは『想像力は人生を生き抜く武器なんだ!』という事を
伝えたいんだと思ったが、これが僕には今ひとつ響かなかった。
それは多分、ヒロインのせいだ。
あれだけ悲惨な過去を抱えたヒロインなのに、その過去には冒頭でしか触れられない。
まるで彼女自身が過去を受け入れるのを拒んでいるかのようだ。
最後の展開も、彼女が内へ内へと籠もってしまっているような印象を受けないだろうか。
僕としては、ヒロインが想像力で辛い現実を受け入れ、それを打破するというよりは、
想像力を単なる逃避に使っているだけのような印象を受けたのだ。
それもそれでアリだとは思うが、ちょっと後ろ向き過ぎやしないかしらと感じた次第。
<2011/4/17鑑賞>