ゴー・ファースト 潜入捜査官のレビュー・感想・評価
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潜入捜査の重みに乏しい。
犯罪組織に同僚を殺された捜査官が、潜入捜査員として組織に潜り込み、壊滅を目指すストーリー。
フランス警察物です。前半は取引現場の監視、犯罪組織襲撃による同僚の殉職、など重苦しくも緊張感のある場面が続きます。
ただ、後半にある肝心な潜入捜査の場面が薄い印象です。下地があるとはいえ簡単に潜入してしまうし、犯罪組織の懐での緊張感を伝える描写にも乏しく感じました。ボスの制圧も簡単で、アメリカの諜報員も「お色気担当?」という存在です。個人的には、盛り上がりに欠ける映画だったと思いました。
凝ったディテールに注目!、これは新しいフィルムノワールかも
チラシやこの作品のホームページなどに「カーアクションが凄い」とあったので、同じリュック・ベンソン「TAXI」のような内容を想像して見に出かけたら、その想像とは全然違った、フランスの潜入捜査の実態をドキュメンタリータッチで的確にとらえたシリアスなサスペンスで、いい意味で裏切られた。この作品、今までのリュック・ベンソンのものとは、かなり趣きが違う。
映画の最初から最後まで、いたるところで感心させられたのは、ディテールの細かさだ。主人公の警察官マレクは、泥棒の一味などに潜入して犯人逮捕に協力する形で信頼している同僚に関わっていたのだが、その同僚が麻薬密売の摘発の最中に凶弾で亡くなってしまう。そこからマレクは、ヨーロッパを席巻している麻薬組織の摘発のために、潜入捜査を行う組織へと入るのだが、映画の前半、その組織でマレクが訓練される様子を細部にわたって描いていたのは、とても興味深いものだった。特に、夜寝ているところを叩き起こされて川に放り込まれるシーンは、潜入捜査が死と背中合わせであるほどに危険なことを、主人公マレクだけでなく観客までも思い知らされて、ちょっとドキドキしてしまった。
そしていよいよ、マレクが麻薬組織へ潜入捜査していく映画の後半も面白い。組織に信頼されるために、警察官でありながら一般の家に強盗に入ったり、組織の裏切り者を殺したりと、悪の組織へと自分から踏み込むマレクの淡々とした表情には凄みを感じさせられた。また、軍事衛星まで使うハイテク機能を駆使した麻薬組織を追う側の描き方もなかなかに見応えがある。あまり細かく言うとこれから映画を見る人の興味を削いでしまうので伏せておくが、驚くほどの細かい目配り、そこまでやるのかと思うくらいの用意周到さなど、麻薬組織側とそれを追う側との丁々発止の駆け引きはとてもスリリングなものを感じた。チラシなどにあるように、カーアクションも確かに迫力は感じられたが、この作品の見どころはアクションよりも、アクションに入るまでの細部、ディテールにあると感じた。
リュック・ベンソンは、以前、「レオン」で新しいフィルムノワールの幕開けを見せてくれたが、今回の「ゴーファースト」でさらに一世代進んだ、さらに新しいフィルムノワールを見せてくれたような気がする。
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