劇場公開日 2009年9月26日

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「世界と繋がる喜びと悲しみ。 個人的に本年度No.1作品。」空気人形 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0世界と繋がる喜びと悲しみ。 個人的に本年度No.1作品。

2009年10月10日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

楽しい

心を持った人形は、空気だけで満たされた自身の体を忌み嫌って言った。
「私、空っぽなの」
それを聞いた孤独な老人はこう答えた。
「奇遇だねぇ、私も空っぽなんだ」

心を持った人形を通して見えてくるのは、泣き出したいほどの虚無感に苛まれる僕ら自身の姿だ。
沢山の人々が同じ不安を抱いて生きている。自分みたいな奴を必要としてくれる人間が、果たしてこの世にいるのか。自分は所詮、誰かの代用品に過ぎないんじゃないのか。

世界に必要とされたい。誰かにとって特別でありたい。誰かを満たし、満たされたい。この映画の登場人物は皆そんな思いを抱えているが、世界=他者と繋がる方法が分からない。もはや繋がる事を諦め、孤独に甘んじる者ばかりだ。

人形を演じるペ・ドゥナは人と繋がる喜びと悲しみを全身で体現。“女優根性”なんぞという言葉を軽く飛び越えた、魂のこもった演技で魅せる。その周辺の人々を演じるキャストも皆、恐ろしいほどハマっている。朝方の澄んだ空気のような、透明感のある美しい映像や優しい音楽も素晴らしい。

飛び上がりたくなるほどの歓喜と、心の奥底を抉られるような深い悲しみとが同居した傑作。個人的には、現時点での本年度No.1作品。

浮遊きびなご