劇場公開日 2010年6月12日

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「リアルに映し出す映画的映画」パリ20区、僕たちのクラス ソクーロフとキェシロフスキさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0リアルに映し出す映画的映画

2010年6月12日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

ドキュメンタリータッチで静かに感情を映像に浮き出してゆく演出は近年のカンヌ映画祭ではお決まりのようになってきた。
ダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』からかキアロスタミの『桜桃の味』からか。
所謂完璧な芸術映画というのがあまりないというのが原因かもしれない。
ヴィスコンティやフェリーニのような完璧なまでの総合芸術としての映画がなくなってきている。
というより作れなくなってきているのだ。

しかし僕個人はこういう作品が大好きであり、こういう作品こそ根本的な映画であり、映像の内に潜む力と作家独自の表現が強く滲み出ている感がある。

話しはいたって単純であり、普遍的である。

ジャンルでいったら学園ものだが教師と生徒という関係を見事なまでに『心理』的に描いた作品だ。
あまり他に例がないタイプの作品である。

いままでの普通の映画の教師と生徒は肉体的な、つまり表明的なものによって、見えない感情を引き立たせたが今回はそうではない。
それがカンヌで受ける作品の特徴であると言ってしまえばそれまでだが、説明が少ない分だけ映像の力によって我々観客に、ありのままの『感情』を伝えるのだ。

これは容易な事ではない

映画作家として非常に至難の業である。

しかしそれを見事にしてやったこの映画は素晴らしい傑作となっている。

教師と生徒という関係だけではない、注目すべきは教育問題や人間関係にも繋がってくる。
非常に見応えがある。

現在岩波ホールでしか上映されていない。
こういう秀作が全国で公開される映画界であって欲しい。

やはりパルムドールにハズレなし!

ソクーロフとキェシロフスキ