「愛する人が死ぬ時、自分が何をしていたか?」抱擁のかけら とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
愛する人が死ぬ時、自分が何をしていたか?
数え切れぬ抱擁とキスを繰り返し、愛の言葉を捧げた。でもそんなことより愛する人を一人で逝かせてしまった?一番大事な時に手を放してしまったのか?
それが判明した時、また人生が動き出す。
それが全て。百万の愛の営みも、死を前にしての行為には何も意味を為さない。だって永遠を誓ったのだから。だって愛の営みは初めて出会った人とだってできる。お金の為にだってできる。君を愛し抜いた、その証とは。
粉々にされてしまった愛の記録…。物ではない。どんなに壊されたって自分の思い出にその人は生きているはず。なのに…。手放してしまった…。だけど実は…。
いろいろな愛の形が描かれている。狂おしく求めあう形。黙って側に寄り添っている愛の形。支配しようとする愛の形。見事に絡み合い話が展開する。
映像は相変わらず美しい。
海辺の場面。部屋のインテリア。何気ないシーンでも見入ってしまう。鮮やかな色彩に目を奪われる。『ボルベール』のようなこれでもかという溢れんばかりに迫りくる極彩色と違って、海辺の白。館の艶のある重厚な色み。白黒映像。劇中映画ではポップな色調。という緩急の効いた色使い。飽きさせない。
そこに役者の演技。これでもかと華を散りばめるペネロぺさん。フラメンコのようでありながらハンサムウーマンかつ母性という幾重にも含蓄のある演技をさらっと魅せるブランカさん。彼女たちに比べたら男どものなんと薄っぺらなことよ。
と、手放しで絶賛したいのに、何故かのれない。
ペネロぺさんが「今までで最高の脚本」と絶賛したそうな。…どこが?
ハリウッド映画でのペネロペさんの扱いみれば、確かにこっちの方が良いですね。でも『ボルベール』と比べるとどうなのかな?こういう、ファムファタルを演じてみたかったのかしら?『それでも恋するバルセロナ』でもエキセントリックな女性を演じていらしたけれど、周りを振り回す態が違う…。
でも正直、劇中劇は今ひとつ。ラストにかけての重要な小道具なんだけど…。”女優としては今ひとつの美人女優が演ずる役”という面倒臭い演技だからなのか、ペネロぺさんの魅力が半減する。
へップバーンさん達風を装ってみました。ってそんな必要あるの?
コンビを組んで4作目の監督と女優のお遊び・悪ふざけ(挑戦)?ブランカさんだったらもっとカメレオンみたいに化けたかもしれないけど…。
すばらしい愛の物語のはずなんだけど、
一方でペネロぺさんのPV映画に見える。
映画って難しい。