「その少女、戦慄につき」エスター 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
その少女、戦慄につき
ジャウム・コレット=セラ監督の出世作ともなった2009年のサイコ・スリラー。
今尚衝撃の“正体”で知られる名編として人気衰えず。
見たのは随分前に一度きり。最近記憶力が低下して見た映画の話やオチを忘れる事多々あるが、本作は忘れなかった。
死産の悲しみを乗り越える為、養子を迎え入れた夫婦。その少女、9歳のエスターは聡明で大人びていて夫婦も喜んでいたのだが…、やがて周りで奇怪な出来事が続発。明かされるエスターの正体は…!?
ネタバレNG。と言ってももう10年以上前の作品だし、オチも知られている。
エスターは9歳の少女ではなかった。見た目は9歳だが、ホルモン異常で身体の成長が止まり、実年齢=中身は33歳の女性だった…!
衝撃の正体数あれど、これはかなりのもの。しかもエスターは、養子先で殺人を犯していたサイコパス。夫に色目を使い、妻を亡き者にしようと企む…。
今回、前日譚『~ファースト・キル』と合わせて久々の鑑賞。
初見だと衝撃と驚愕必至。
分かってる上で見ても充分面白味あり。
例えばエスター初登場シーン。口調も性格も大人びた雰囲気で、イザベル・ファーマンがしっかりと役を作り込んでいるのが分かる。
徐々に見せていく異常な言動。脅迫や殺人など、子供がこんな事をするか…? そんな違和感なく、サイコパスの本性と狂気と残忍さに戦慄する。
改めて、演じたイザベル・ファーマンの怪演は称賛もの。
エスターの衝撃に注目されがちだが、ある家族を見舞う恐怖と苦境と悲劇のドラマとしても見応えあり。
妻ケイトと夫ジョン。二人の子供もいる。反抗期の長男ダニエルと難聴の幼い妹マックス。
一見平凡な家族だが…
新しく産まれてくる筈だった子供が死産。そのショックでケイトはアルコール依存に。酒に溺れている時、ダニエルが氷の池に落下。マックスを車に乗せてる時、危うく事故に。問題絶えない。だからエスターに怪訝を感じ訴えても誰も信じてくれない。
夫は完全にエスターの味方。あの娘がそんな事する訳ないの一点張りで、優しいを通り越して、妻を信用しないバカ夫。一度浮気の過去あり。
ダニエルは当初から何処か薄気味悪いエスターを毛嫌い。子供の勘は当たっていた。マックスは手話を覚えたエスターに懐くが、殺人の場を目撃し共犯にさせられ…。チクったら母親を殺すと脅され、二人共母親の擁護が出来ない。
孤立無援のケイト。エスターの正体を掴むも、キチ○イのレッテル。
エスターの魔の手が家族に及ぶ。ダニエルが、ジョンが、遂にはマックスに…。
ケイトは家族を守る事が出来るか…?
いや、家族に危害が及ぶ。
聡明と思った娘をそうとは知らず養子に迎え入れたせいで…。
衝撃のサイコ・スリラーであり、『ミスト』と双璧を成す近年屈指の鬱映画でもある。
『ジャングル・クルーズ』『ブラックアダム』とドウェイン大作を手掛けるまでになったジャウム・コレット=セラだが、本作のようなスリラーこそキャリアの出発。また原点回帰のようなスリラーを!
ヴェラ・ファーミガは最近すっかり“死霊館ユニバース”でお馴染みだが、そのきっかけも本作だと思っている。熱演!
続編は無理。だから前日譚は正解。
エスターの更なる知られざる過去とは…?