「散りばめられた伏線と洗練された脚本」エスター といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
散りばめられた伏線と洗練された脚本
まず申し上げておきますと、私はホラー映画が大の苦手です。
幽霊も嫌いだしグロイのも嫌いで、何よりも突然大きな音と映像演出で驚かせるジャンプスケアという手法が大嫌いです。
そんなホラー嫌いの私ではありましたが、色々な人から「面白いよ」とオススメされて今作「エスター」を鑑賞いたしました。
結論から言えば、めちゃくちゃ面白かった。もちろんホラー映画なので怖がらせたり驚かせたりする演出や出血を伴うような痛々しいグロシーンもあるのですが、それらもストーリー上の必要性を持ったシーンとして出てくるため嫌悪感なく見ることができました。随所に散りばめられた伏線や無駄のない脚本、最後に明かされる衝撃の真実など、本当に面白いホラー映画でした。
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3人目の子どもを死産で亡くし、悲しみに暮れていた夫婦のケイトとジョン。悲しみから脱却するために孤児院から養子を迎えることを決め、孤児院で出会った不思議な雰囲気の少女エスターに強く惹かれて彼女を養子にすることにした。最初こそ家族と仲良くしていたエスターだったが、日に日に過激な言動をするようになったり彼女の周りで不可解な事故が発生するようになる。
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最初はちょっと不思議な雰囲気のある可愛い少女にしか見えないエスターが、日に日に本性を露わにしていく描写は本当に見事で、エスター役のイザベル・ファーマンの演技力やメイクの力が発揮されていたように感じます。
脚本も無駄がなく、エスターの首と手首のリボン・古い聖書に挟まった写真・エスターの年齢不相応な性知識やピアノ技術など、随所に伏線を張っているところも良いですし、登場した武器(ハンマー・拳銃・果物ナイフ)がしっかり活用されているのも良かった。「チェーホフの銃」という演劇における用語があるように、登場したアイテムや設定が無駄なく活かされていたように感じます。
各登場人物についても個性があり、エスターの本性に気付くタイミングが違っていたりそれに対する行動が違っていたり、そしてエスター自身にも悩みや葛藤があったり。エスターの行動により家族の間でどんどんと不和が生まれてくる描写は鳥肌が出るくらい素晴らしかった。
まだ観たことがない人は是非とも鑑賞してみてほしい。オススメです。