劇場公開日 2009年3月14日

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「魂の7分47秒」SR サイタマノラッパー えらさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0魂の7分47秒

2013年10月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

楽しい

幸せ

RHYMESTER宇多丸さん絶賛ということで鑑賞しました。最初に言っておくとこの映画は王道の音楽映画ではありません。何故なら、彼も(僕が耳にしたところで)言っていたように音楽の力は周りの人々に最終的に伝わらない(というか伝える舞台が用意されていない)からです。

ハッキリ言って作中でドラマチックな出来事は何一つ起きません。それどころか主人公IKKUと相棒のTOMは作品スタート時点より大幅に後退してる。作中通して非情なまでに冴えないし報われない。ヒップホップというジャンルへの言い得ぬ偏見や埼玉という土地柄の設定が上手く効いてるのでしょう。ボッコボコですよ。

しかも舞台は(埼玉だから当たり前なんですが)本当に僕らが普通に歩いてる街中だし、出てくる人物の会話とか空気感?がすごくリアルなんです。台詞と台詞の間とかがすごくありそう。長い時間を過ごした男同士の一種の気だるい感じの会話の間とか。ちなみにそのおかげで僕は中盤までずっと笑ってました。話を戻すと、だから、本当に僕らが体験してる感じの世界を描写してるからこそ、そこに生きる顔も良くない女にモテない金もないIKKUがあの手この手でボコボコにされる描写は見ていてキツくなります…。

折れるけどまた立ち上って前に進むIKKUに胸打たれます。前に進む事への決意、それがラストの7分47秒の1カットに集約されています。それまで政治とか世界とかをリリックにしてた男が…。明らかに後退した距離より前進した距離の方が短いけど、それでも胸に響きました。ベタベタな感想であれですが、諦めないことのかっこよさを最も体感したシーンでした。どんなスーパーヒーローモノやハリウッド映画より。

そしてそこからのエンディングの流れがもう最高で…。映画館でスタッフロールで席を立つ人はこの映画を見て欲しい。もうそんなことをしようとは思わなくなるのでは。スタッフロールでこんなに幸せな気分になったのは初めてです。続編も絶対見ます。

あと僕も正直ラスト初見は「え??これで終わり??」ってなったので☆5にはしませんが、スタッフロール明けて2回見たら何故かどうしようもなく気に入ってしまったので4.5です。

えら