「正直、きつかったです」蘇りの血 osa47さんの映画レビュー(感想・評価)
正直、きつかったです
映画を製作し、公開するというのは、非常な(尊敬すべき)労力だと思うので、あまり批判的なことは言いたくないのですが、市井の映画愛好家としての、義憤とでもいうべきものに駆られ、はじめてレビューを書かせていただきます。
お、なにかがはじまりそうだ、と少なからずの期待を抱かせるオープニングなのですが、映画が進むうちに、そんな期待はみるみると萎み、やがて失望へと変わり、最後は疲弊とともに、悲しみとも怒りともつかない嫌な感情を覚えてしまいました。信頼していた人に裏切られた時の気分ってこんな感じなのかもしれませんね。
なにがそう感じさせるのでしょう? 観終わって数日を経た今でもじつはよくわかっていません。脚本? 演出? モチーフ? う〜ん。なんなんでしょう。なんかもう、(……言葉は悪いですけど)すべてが、拙い、という気がしてしまいます。
例えば、大王。ちっとも大王らしくない。威厳がない。品位もない。強そうでもない。だから、なぜ、下々の者がへいこらと服従しているのかさっぱり掴めない。もちろん、それが逆に味噌なのかな、とも思って、しばらくは我慢するんですが、どこまでいっても説得力がない。そして、白けてしまう。
それから、カメラワーク。この監督は、これまで、そのあたりの手腕でも高く評価されているようですし、私も過去の作品においては、その手腕とセンスを評価することにやぶさかではありません。しかし……この映画では、ただもう、いたずらに弄んでるとしか、思えませんでした。この映画で多用される長回し(スローモーションを含めて)に、どのくらいの意味と効果があるんでしょう? 私には、短い映画を、劇場用の尺にするだけの、浅はかなトリックにしか思えませんでした。
もちろん、私が馬鹿なだけかもしれないのですが、テーマも薄っぺらい気がするんです。再生? 良く言えば、「スピリチュアル」なのかもしれませんが、描かれてる世界や人生にリアルな重みが感じられないのに、再生、などと言われても……脱力してしまいます。
途中で、そうか、これって中村達也さんの”PV”なのか、とも合点しかけました。そう割り切ってしまえば、楽しめないこともないな、と思い始めたんですが、じゃあじっさいに、”プロモーション”になってるかというと、はなはだ疑問です。これを見て、中村達也さんのことを以前より好きになるということはないような気がしますね。彼を知らない人がこれによって彼を認知するということはあるでしょうけれど、そんなの当たり前ですし。逆に、中村達也さんが気の毒に思えてしまいます。
一つ良い点を挙げるとすれば、音楽ですね。この音楽がなかったら、さらに観るに耐えなかったかもしれません。でも、音楽を聴きにいってるわけじゃないので。
ヤフーなどのレビューを観ると、けっこう評判がいいんです(じつは、私もそんな評判に煽られて観に行ったくちです)。不思議です。というか、ちょっと恐ろしくなります。この程度の映画を、ちやほやしてるうちに、日本の映画が、ひいては日本の文化というものが、全体的に、いずれは取り返しのつかないくらいに、劣化してしまうんじゃないかと、まあ、図に乗った杞憂かもしれませんが、そう感じてしまいました。
というわけで、正直、きつかったです。残念ながら、おすすめはできませんが、その一方で、皆さんがどう感じられるのか、興味深くもあります。