「大国に蹂躙された小国の叫び」カティンの森 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
大国に蹂躙された小国の叫び
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総合75点 ( ストーリー:75点|キャスト:80点|演出:85点|ビジュアル:75点|音楽:65点 )
残虐に大量殺戮された将校とその家族を描くこの作品は、決して観て楽しめるといった類の映画ではない。だが歴史的に有名なこの事件を伝えたいという強い思いが感じ取れる。二つの大国に挟まれて、その勝手な思惑のままに蹂躙された小国の苦悶の叫びが、事件から数十年を経て地底から響いてくるようだ。
また常に張りつめた冷ややかな空気と恐怖感がある演出力は相当なもので、当時の社会と家族の感じた重々しさが肌にまとわりつく。物語は虐殺を正面から描くのではなくて残された市井の家族のほうから始まるという異色作である。抵抗するまもなく短期間に一方的に殺された将校を作品の中で長い時間をかけて追いかけ続けるよりも、真実を知るまでの家族の長い生活と政治的弾圧と嘘を描いて徐々に全貌を解明していくというのは構成として悪くない。緊迫感の下で静かに進む物語が一気に動く最後も衝撃。ただし虐殺の政治的背景についてはもう少し説明してほしかった。
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