「迫ってくる想い」カティンの森 xtc4241さんの映画レビュー(感想・評価)
迫ってくる想い
こんな救いがないように見える映画をなぜ、撮るんだろう?
映画を見終わったとき、そんな疑問をもった。
それほど、沈痛な思いにさせられる映画だった。
でも、ここで思考停止になったら、
それこそ、この映画を見た意味がなくなるのではないか。
僕は考えた。
ドイツとソ連の中間にあるポーランドの悲劇がこれでもか、
これでもか、と次々に描かれる。
夫を待ち続けるアンナとニカという母と娘の主人公はもちろん、
兄の本当の消息を知って、国家に反逆する妹アグニェシュカ。
国家の意図を無視して、ポスターを破っただけの若い学生とそれを
助ける女子学生。そこに芽生えた淡い初恋。
唯一の救いになると思われた出会いも、あっという間に夢と消える。
そして、大量に、機械的に殺されていく捕虜たち。
戦争は悲惨だ。
それはわかっているつもりだ。
でも、戦争が終わり、一見、安定を保っているようにみえる社会にも、
実際は大きなタブーが横たわっている。
そこに描かれた普通の人たちが、当たり前に、真実を語れない世界。
語った瞬間に、国家に反逆したことになってしまう恐ろしさ。
でも、ほんとうに恐ろしいのは、現代に生きている自分にあるのではないか。
こんな映画は見たくない。救いようがない映画だ。
この映画のことを絶対見ちゃだめだよ、後味が悪すぎるから。
とアドバイスをくれた人がいた。
アンジェイ・ワイダ監督は問いかけているのではないか?
そういったいわば飼いならせれた感性に。
そのことに、疑問を持たなくてはいけないのではないかと。
アンジェイ・ワイダが、なぜこの映画を作ったのかという問いかけ、
それは、僕自身への問いかけにつながっていくのだと思った。
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