「清々しい、戦う男たちの美学」ウォーロード 男たちの誓い こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)
清々しい、戦う男たちの美学
よく国政選挙で、「私は命がけで戦います!」なんていう候補者を目にすることがあるが...、この作品を見たら「命がけ」という言葉を軽々に使ったりしないかもしれない。この作品は、口先だけでなく、本当に命をかけて戦いに挑んだ者たちが、力強く描かれている。
この作品では、盗賊団から国の軍に転じた三人の義兄弟が挑んだ、戦いの物語だ。その描かれている彼らの戦いの相手が、反乱軍の太平天国だけでないところに、この作品の面白い点なのである。
盗賊だった者たちは、自分たちを政府の役人どもに認めてもらうために戦い、自分たちだけでなく民の幸せのためにも戦い、そして愛する女のためにも、命がけで戦う。戦争映画は、ドンパチやチャンバラの演出のかげにある、人間たちのはかなさやわびしさが描かれたりするものだが、この作品では、戦いに挑む「男たちの美学」を前面に見せているところに特徴がある。そのために、やや強引な印象もうける演出も見られるのだが、それを凌駕するくらいの、男たちの生き様の素晴らしさに感動させられた。
その「男たちの美学」には、それを貫くには修羅にもなる、という並々ならぬ決意も隠されている。そこには、男らしい優しさなどなく、相手を傷つけるのも当然という、恐ろしいまでの意思の堅さもまた、命がけのものであることは、ラストまで見るとわかるのだ。
優しさばかりを強調したがる男性映画が昨今多い中、昔の鶴田浩二と高倉健が演じた「昭和残侠伝」にも似た、命を張って生きる男たちの映画の登場は、実に清々しいものを感じた。中国や香港だけでなく、日本の監督にも、こんな作品に挑戦してほしいと思う。
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