セントアンナの奇跡のレビュー・感想・評価
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メッセージ色が苦手じゃなければ
無秩序とも思える戦争の前線において、
逆に黒人ならむげにあつかってもいいだろう、といった
白人側の都合のいい論理も存在した。
この映画はそんな中で、祖国アメリカのために、
遠いヨーロッパでドイツ兵と戦っている黒人兵士たちの話。
そんな極限状態ではたして人間は尊厳を失わずに
生きていられるのだろうか?
帝国主義に反発するイタリア人パルチザン、そしてドイツ兵、アメリカ兵、一般人。
国も人種も様々な人間たちが出てきますがひとくくりにせず
結局は個人個人の問題であると描かれているのは第三者的に見ても納得です。
たまに白人の観点から、黒人黄色人種を
文化も理解しない劣る人間だと描く映画もあるからね。
皆が一様に神に祈るが神なんかいるんだろうかって思ってしまう。
明らかなのは、死は誰の上にも平等に訪れるということだけだ。
メッセージ色が苦手でなければ、良い映画だと思えるものではないかと。
ラストに救いもあります。
んでもいまひとつスッキリしなかった。
まあまあ
とりあえず全ての具材が生煮えで、味の方向性もボンヤリした創作料理のよう。
あらゆるプロットの回収が総じて雑な気がする。
なんだか総集編を見させられている感じがした。
以下意味不明と感じた点
仲間を直接殺された訳でもないのに、何故何十年も恨み続けられるのか。
身を守るために渡された拳銃で丸腰の相手を撃ったらダメでしょう。
しかも確認も無く、問答無用でいきなり撃ち殺すのは変じゃないか。
アメリカでは郵便局員は窓口に立つ際、常に銃を手元に置いているのか。
ジョンタトゥーロと、ジョンレグイザモの役柄が彼等である必要性。
アンジェロ自身が新聞を拾う必要性。
ドイツ版東京ローズのくだりは必要なのか。
小屋でドイツ兵を撃った際、近くで聞いていたビショップは何故すぐ駆けつけなかったのか。
眠れる男が怒るくだりがショボイ。安全な本部に連れて帰ろうとした黒人士官の首を締め上げるだけでお終いって。そもそも眠れる男を怒らせたのはドイツ軍じゃなかったの。
殺人の保釈金が200万ドル払えば即免罪って、アメリカの司法制度が問題でしょう。
以上、色々と書きましたがキャラクターや時代考証、多言語の使い分け、問題提起などキラリとひかる部分もちょくちょくあるだけにまとまってないのが残念な作品。
それでも殺人は間違っている
顔に特徴があるわけでもないので、
現代と戦中の人の関係が良く分からなかったのですが、
それは狙いだと思います。
2人の顔がすぐ分かってしまうようだと物語の厚さが
全然変わってしまいますからね。
戦争は人間性も変えてしまいます。
良い人悪い人、国や信条と関係なくいろいろです。
チョコレートの巨人君ちょっと変わってるけど
一人最初から最後まで良い人でした。
最後がとても残念
現代では、どんな理由があろうとも、人を銃で殺害するのは犯罪です。
正直、ただの殺人者を金で助けるだけのエンディングはがっかりもの
それが刑務所の面会で再開というのであればもっとスコアは高くなりました。
人殺しは人殺しなんです。
久し振りに感動しました!!
スパイク監督らしい、黒人だけで無く、人種差別は良くないと訴えた映画でした。ナチスにも米兵でも、パルチザンでも悪い人もいれば、良い人もいる。
要するに個人の心次第で、人種を超えて仲良く出来るはずだ。少年の名がアンジェロ(天使)なんて、ラストの奇跡を示唆するようですね。しかし、主人公の黒人兵の生き残り方が、あまりにも不自然な描き方だった。でも、ラストは爽快な終わり方だった。
命の恩返し。
第二次世界大戦中のイタリアで、実際に起きた虐殺事件を
基に描かれたという本作。
S・リーが監督ということは、ただの戦争映画ではないだろうと
たぶん人種問題を必ず入れてくるだろうとは思ったが、やはり。
それにしても…こういった虐殺シーンを観るのは珍しくないが、
そこだけをメインに記憶してしまう作品が多い中、
今作は、あのS・リーがそんな映像を撮ったことに驚きつつも、
見事な(ややファンタジー的)人間ドラマに仕上げたことが凄い。
とくに冒頭の「?」が、ラストで線繋ぎで明かされるのは見事。
そして観た後の心持ちがまったく違うものになっていくことも。
単なる戦争虐殺映画とも、迫害人種差別映画とも、これは違う。
人間の命の重さ尊さを訴える人間が、昔だろうと異国だろうと
存在はしていたのだ。戦時中だからといって、それを軽視する
無能な者もいれば、隠れてでも全うしようとする者もいたのだ。
そういう事実を例えば今の世の中に当てはめてみて考えると、
今も変わらず周囲に存在していると感じることがないだろうか。
どの国の兵士もパルチザンも「早く家に帰りたい。」と口を揃え、
これはどこの戦争だ。誰のための戦争だ。と疑問を抱き始める
ようになると、ただ生き延びたい。と思うのは当然のことである。
憎むべきは、他国の名も経歴も知らない兵士や民間人でなく、
人を騙して兵器同様に遣い込む首脳戦犯たちにあるのだから。
時代が時代ゆえ黒人兵士には(兵士でなくても)辛い時代だった。
真っ当にそこを描こうとする監督の心意気は伝わる。
だが苦しんだのは黒人ばかりではない。母国で差別されてきた
人間の性を他国で焙り出そうとしても、その価値観はおいそれと
変わるものではないことも知る。本来共存するべき人間たちが
他を蹴落とし優劣を競い、果ては殺し合うというバカげた行為に
嫌気がさして終わらせようと動かなければ何も変わらないのだ。
…なぜ彼があの状況下で助かったのか。過去、そして現代も。
あり得ない行為があり得るのであってほしいという作者の願いが
あそこに集約されたのだろうと思った。
(Wジョンの出演には驚いた!とくにレグイザモ。名もあったのね)
付箋が回収されてゆく気持ちよさ
衝撃的な始まりから、過去の物語へさかのぼり、
数々の付箋を回収し、美しく終わりを迎える。
随所に大切な思いや言葉がちりばめられ、それがラストへとつながる。
「外国の方が自分でいられる」黒人兵たちが心通わせたイタリア人たちは
悲しい終わりを迎えるけれど、たった一つの救いが、心通わせた想いが、
また、戦争なんて終わってしまえばいいのに、と本心を浮かべるドイツ兵の悲しみが
ラストを作り上げる。
これはけしてハッピーエンドではないのだけれど、観た人たちは(自分も含め)、たくさんのことを考え、いろいろなことを得るだろうと思う。
しかし、やや長い。ちょっとつかれる。観る人は椅子のやわらかいシアターでどうぞ。
パンドラの箱のような映画
eiga.comさんの独占試写会で観ました。
深いです!重いです!でも、とても考えさせられるし、後から考えれば考えるほど好きになる映画。ハリポタのように観て笑ってさっぱり楽しい、という映画ではありません。メッセージ性の強い映画なので、観終わってからもかなり頭に残っていろいろ考えてしまいました。
一言で表すなら、パンドラの箱のような映画だと思います。
戦争、虐殺、差別、寂しさ、思い込み、神はいるのか、など、この映画では死と悲惨と問題提起が押し寄せてきます。とても考えさせられます。
人が殺されるシーンは非常に生々しく、R15指定も納得です。私は、観ただけで戦争への憎しみが沸き上がってきました。あんな殺し合いの中で、さらにスパイク・リー監督の主題である黒人差別問題が絡んできて…泥沼です。
映画を観た直後はそういうわかりやすく提示されているテーマが心に残っていたんですが、あとから思い返して反芻して考えてみると、この映画は他にもいろいろな問題を提示していることに気づきました。
例えば、元説教師だったビショップが「神を信じるか?」という問いに対して「説教をしてるときはな。でも、すぐにだめになる。神様が俺たちを無傷で戦争から帰らせてくれるのか?」というニュアンスのこと(うろ覚えですが…)という言葉。この言葉は、実際に悲惨な殺し合いの中に投げ入れられている弱い一人の人間からの言葉として非常に重みのあるものだと思います。これに対して、何度も出てくる人々の祈りのシーン、人々が喜び、祈る場所としての教会、ひとときの幸せのモチーフ。それが、セントアンナの虐殺でまさに殺戮の舞台になることは皮肉として鮮烈に描かれているのではないでしょうか。
また、村で出会う女性の夫が帰らない寂しさとゆがみ。夫への操を守りきることもできず、しかも本当に好意を持っている人ではない男性に身を投げ出すこの女性も、人の弱さを体現していると思いました。この女性はしかも、父に半分支配され続けているのです。その父はファシストであることが誇り。彼の信じているのはファシズムでありムッソリーニなのです。村にドイツ兵が襲撃してきて村人が「排除」されていくとき、その父は助けてもらえると思い、「私はファシストです!」と敬礼して飛び出した瞬間、ドイツ兵に撃たれました。一人の老人が、自分の信じてきたものから最後の最後に裏切られて、信じてきたものが何の意味も持たなくなったばかりか、その信じてきたものに殺されるのです。戦争によって、人々の生活が、信念が、家族が、生きてきた足跡全てが否定されていくのがこの映画の実直なまでの悲惨さなのです。
しかし、エンディングではパンドラの箱の底に残っていた希望のように、たった一つの希望がきらめきます。実は映画冒頭の過去の話にさかのぼる前のところからエンディングは読めてしまうような作りなのですが、「巧く面白くする」ことではなく、本当に伝えたいことにフォーカスしていく映画だと思うので、全然問題ないと思っています。展開がわかってても、やっぱり最後は泣いてしまいました。
テーマ性の高い作品、社会問題や戦争を扱った作品が気になる方には強くお奨めします!
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