「消えて行ってしまった数多くのバンド達に対する鎮魂歌」BANDAGE バンデイジ 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
消えて行ってしまった数多くのバンド達に対する鎮魂歌
消えて行ってしまった数多くのバンド達に対する鎮魂歌。
脚本に岩井俊二が関わっているだけに、切ない恋愛模様が、「これ、アドリブ?」と思う位にセリフの多くから感じとれる。
等身大の恋愛に悩む女の子の気持ちを掴み取っており、同世代の女性達からすれば共感出来る部分はとても多いでしょう。
でも途中から、北乃きいちゃんの心が、単なるチャラ男でしかない赤西仁から、才能が有るのに“孤独感”を漂わせている高良健吾(彼にとっては『フィッシュストーリー』とゆう優れた音楽物も有る)に唐突に傾いて行ってしまう辺りは、少し突っ込みどころか。
それでも最後は…やっぱり女性は母性本能をくすぐる駄目男が好きなんでしょうね…って言うか、王道ですな。
でもですね。この作品の本当に面白いところは、消えて行ってしまった過去多くのバンドに対しての鎮魂歌であるのは間違い無い。
その先に有るのは、あのビートルズだったりする訳ですが、だからと言って、北乃きいちゃんと赤西仁がオノ・ヨーコとジョン・レノン…って事では無いんですけどね。
そんな例の1つとして、マネージャー役の伊藤歩が演じる女性は、この業界に何とかしがみついている元バンドウーマン。
彼女こそが“その悲哀”を知っているからこそ、今がどれだけ大事な時期なのか…を知っている。
単に太股を見せているだけでは無いのだ(笑)
北乃きいちゃんは若手の女優さんの中にあって、恋に悩む役柄が抜群に上手い。『幸福な食卓』:『ラブ・ファイト』と来て、昨年の『ハルフウェイ』に続き今回もなかなか良かった。
初めてバンドの音楽を聞いた時に感じた、「自分と同じだ…」とゆう想いを胸に、バンドが有名になって行く過程と平行して自分も成長して行く。
相手役の赤西仁は、今回チャラ男の設定がなかなか嵌っている。意外と真面目な性格だったりするのだが、常にイジイジしているところも巧みに演じていた。
但し、今後俳優としてどれだけ成長して行くのかは、この作品からでは判断がつきにくい感じでした。
伊藤歩は登場する始めの内は嫌みなマネージャー役。その後は彼女らしいふんわりとした人間性が見えて来る。
柴本幸は気の強いバンド仲間。
予告編での彼女が怒り出す場面を散々見ていた為に、いつその時が来るかとついつい身構えてしまう。
でもそんな彼女が何故このバンドにしがみつくのかは最後まで謎のまま終わるのですが…。
そんな訳で、少しでも浮き沈みの激しい音楽業界に足を踏み入れた事の有る人ほど、作品の世界観に浸れる可能性が有ります。
単なる恋愛映画として観てしまうと、中途半端な感覚は否めないかもしれませんね。
肝心の音楽場面は流石に当代実力プロデュサーだけあって、魅力的な曲が使われている。最後に歌う杏ちゃんの綺麗な歌声にはちょっと驚いた。
主演の2人が知り合うきっかけになるエピソードは、如何にも有りそうな気がする。彼の奔放な性格を表すにも適切だったと言える。
でも作品中に、北乃きいちゃんがいきなりマネージャーを勤めてしまうのは幾ら何でも無理矢理だよなぁ〜。
誰か〜交換日記しませんか〜。
《ささくれ》について語りませんか〜。
(2010年1月20日TOHOシネマズ西新井/スクリーン10)