グラン・トリノのレビュー・感想・評価
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ヴィンテージな最期、そしてラストカットが素晴らしい。
○作品全体
思想や思考が凝り固まった老人がその心を次第に変化していくヒューマンドラマではあるが、その根底にあるのは妻が死に、自身も病に冒された状況での「エンディングノート」。
昔は国を守って戦っていた男は年老いて家族も守る対象ではなくなり、いつしか逆に心配される側になっている。守るべき領土は自宅の庭になってしまった。過去を回顧するばかりで目の前の世界が矮小化しているコワルスキー。その目の前に現れたのが、今一度世界を開かせてくれるスーだ。自身の守りたいものを再び手に入れたコワルスキーが、幾度もこぼれ落ちそうになる「守りたいもの」を静かに拾い続ける姿は不器用ながらとてもカッコよく感じた。
自身の命が短いことを悟って自ら死に場所を選ぶような最期は「旧態依然」というより「ヴィンテージ」という言葉が相応しい。
ラストカットの街を走るグラン・トリノがその「ヴィンテージ」の輝きを目一杯表現しているようで、これがまたかっこよかった。
○カメラワークとか
・やっぱりラストカットが良かったな。グラン・トリノが走り去った後もFIXで撮り続ける道路。行き交う車は様々だけど、同じ道路を走っていて、その先も走り続ける…と言ったような。作品の余韻の残し方としても素晴らしかった。
ウォルト・コワルスキー
の前半のYellowに対する偏見は、案外監督自身の偏見に近いものだったのかもしれません。
それでも、知り合うことによって、人は理解し合える。私はそう受け取りました。
傑作。
グラン・トリノの走り去った姿が心に残る。
<追記>
ふと、クリント・イーストウッドの「危うさ」も感じてしまった。
イーストウッドの贖罪的な映画かと
今までのイーストウッドの正義感が間違っていたと大々的に映画で表現した映画だと思いました。ダーティハリーに代表されるように、悪を駆逐するためには、何をしてもよいような志向の作品に出演してきました。しかし、彼は、そうしたアメリカ的な価値観が間違いだったと気づいたのでしょう。正義の名を借りた悪の方が質が悪く(「許されざる者」)、言い換えれば、それはアメリカなどの先進国側なのだと。劇中、アジアに戦争(朝鮮戦争)に行った時に、彼らはイデオロギーなどではなく、ただ自分の国を守ろうとして戦争をしていたことを告白しています。それ故に、映画の中では、アジアの少数民族モン族との交流に気持ちが傾いていき、アメリカの病んでいる若者たちと戦います。そして、解決の仕方は、悪を駆逐するのではなく、自らを犠牲にして守ること。暴力を更なる暴力で解決しようとしても、暴力の連鎖が生まれるだけ。(現在の戦争のように)今までの考え方の間違いに気づき、自分たちの姿に気づけ!というメッセージが強く胸を打ちます。そう思ってみると、彼の並々ならぬ決意が伝わってきます。きっと、朝鮮戦争に行ったことで、イーストウッドはトラウマに悩まされていたのでしょう。常軌を逸した行動や嗜好も、そこから生じたものだったのかもしれません。
最後、撃たれて倒れている時は、十字架の恰好でした。現実に対応していない宗教を嫌いながらも、自らを犠牲に捧げる姿は、より現実的な殉教者のようにも見えました。
ハッピーorバッドエンド?
個人的には、今までクリント・イーストウッドの監督主演作品はあまり当たらなかったが、本作はありかな。
手放しにハッピーとは言い切れないが、全体を通してみると微笑ましさの方が印象に残る。
タオに男の会話を学ばせていたシーンは、本当に笑えたし本当にほのぼのできた。
本作の結末について、ハッピーorバッドを討論するのも面白いかも。
ところで、題名は単純に車名ととらえてよいのだろうか。
凄い映画で感心・感動。唯一無二に思える彼の知性・洞察力・監督術は、いったい誰が引き継ぐのだろうか?
クリント・イーストウッド 監督による2008年製作のアメリカ映画。
原題:Gran Torino、配給:ワーナー・ブラザース映画。
クリント・イーストウッド監督作品には、何時も本当に感心し感動させられる。映画文法を踏まえた、一種の魔法の様でも有る。
ラストは良い意味でやられた!と思ってしまった。てっきり最後は、多くの映画同様、機関銃でワル達を皆殺しかと思っていたのだが。自分の命を犠牲にして、あいつら全員を長期間牢獄にぶち込ませる戦略を取るとは!成る程、復讐は復讐を呼ぶので、あのファミリーを長期間守るのにはとても良い戦略か、なんて頭が良いのだ!というか、意外性が有るとても優れもののストーリー・脚本だ。
目の付け所が素晴らしく流石というか、この映画では異人種、具体的にはアジア系の人達との共存共栄が大きなテーマとなっていた。隣人のモン族 は、映画の中でも言っていた様に中国、ベトナム、ラオス等の山岳地帯にすむ民族集団。ベトナム戦争時、米は共産主義勢力と戦うためモン族を数十万人雇ったらしい。戦後は共産党政権に虐待され、難民として欧米諸国に移住。このうち在米モン族は何と約30万人とか、知らなかった。
本物の家族達(息子や孫)と対照的に描写されていた隣家の姉(アーニー・ハー)と弟(ビー・バン)の素直さや真面目さ他人に対する気遣いの深さが、同じアジア人として嬉しかった。オーデションで選ばれ、2人とも映画出演は初めてだと思うのだが、ナチュラルな演技でとても良かった。また監督としてのイーストウッドの演出力の凄さをも感じさせた。ふたりとも凄く目立ってる訳ではないが、プロの俳優になったらしいのは、応援したくなるキャラクター表現だっただけに、少し嬉しい。
クリント・イーストウッド演ずる主人公が、グラン・トリノに象徴される自分が得たものや考え方・ノウハウを、血の繋がった息子や孫で無く、異人種ながら真面目で一生懸命の隣家若者に伝えようとなっていく物語展開も、大きな感慨を覚えるものであった。「金を残すは三流、仕事を残すは二流、人を残すは一流」というが、そういう伝えたい存在が有ることが何より人間の幸せだよなと、イーストウッド監督の想いに共感できた。唯一無二に思える彼の知性・洞察力・監督術は、いったい誰が引き継ぐのだろうか?
監督クリント・イーストウッド、製作クリント・イーストウッド、 ロバート・ローレンツ、ビル・ガーバー、製作総指揮ジェネット・カーン 、アダム・リッチマン 、ティム・ムーア、 ブルース・バーマン。
脚本ニック・シェンク、原案デビッド・ジョハンソン、 ニック・シェンク、撮影トム・スターン、美術ジェームズ・J・ムラカミ、音楽カイル・イーストウッド 、マイケル・スティーブンス、主題歌ジェイミー・カラム。
出演 クリント・イーストウッド: ウォルト・コワルスキー、ビー・バン: タオ・ロー、
アーニー・ハー:スー・ロー、クリストファー・カー: レイヤノビッチ神父、ジョン・キャロル・リンチ。
枯れた老人
朝鮮戦争での経験が原因で(恐らく)心を閉ざし、身内にも虐げられている頑固親父のウォルト。
ある日隣に越してきた「モン族」という民族の家族と交流することで徐々に心を開いていく…。
というありがちな話。
ストーリー展開もベタだと思います。
「運び屋」を鑑賞した時にも思ったことですが、
クリント・イーストウッドは「枯れた老人」の哀愁を表情や声の調子で表現するの演技がほんとに上手い。
だからベタな展開でも飽きることなく、ましてや映画世界にどんどんと引き込まれながら鑑賞できる。
宣教師に「懺悔」をするシーンで自身の朝鮮戦争での行いを懺悔しなかったのだけど、
異民族であるモン族を「守る」ために自身を犠牲にした最後のシーンで腑に落ちました。
その行為自体が、ウォルトなりの「懺悔」であり、
「俺が決着をつける」という言葉には、自分の人生にもケジメをつけるという意味も
込められているのだろうな思います。
渋いジジイだ。かっこいい。憧れます。
「生」に詳しくない男のグラントリノ
クリント・イーストウッド演じるウォルトという男は稀代の正直者なのだ。正直だから懺悔は好まない。それは彼にとっては一世一代の大仕事。
「触るものみな傷つける」という勢いの頑ななウォルト。愛した妻の死で孤独と頑なさに拍車がかかっている。
この作品では若い牧師がいい味を出している。彼の指摘は正しい。ウォルトが詳しくなってしまったのは「死」であって「生」ではない。正直な彼は自分がおかしたことをごまかせずにいるので、「死」と「罪」への意識が常態化しどう生きるのか考えることがうまくこなせないでいる。
彼はうまく子供と向き合えず子供とも孫とも絆を持ててない。だから彼は大事にしてきたグラントリノを託す気になれないでいる。未来への手がかりがない。
そんな彼が未来への手がかりを得る。痛みを負いながらも熟考し動き出すウォルトのあの一日は、彼にとって「生」の実感を憶えるのに十分だったんじゃないか。
大事なのは時間の長さでもなく血縁でもなく、希望なのかもしれない。
ラストシーンには希望がみえた。
グラン・トリノ
クリント・イーストウッド好きだか見てなかった作品。内容を全く知らなかったのでアジア人がメインだとは思わなかった。近所のおじいちゃんと少年の成長の話は本当に泣ける(ヴィンセントが教えてくれたことetc...)ただ、あの作品より朝鮮戦争のヒストリー、人種の違いなどの問題を描いてる点。グラン・トリノとクリントの骨董品のかっこよさがよりこの作品を輝かせてると思った。
ギブアンドテイク
頑固ジジイで息子家族からは嫌われている。ただ隣に越してきたモン族とは仲良くなり、、。
どなたかのレビューで書いてあったが、息子家族はイーストウッドから貰うことしか考えてないが、モン族の人たちは与えていた。
ギブアンドテイクが大事。
最後のグラン・トリノが走るシーンカッコよかった。唯一の走行シーン?
イーストウッドもモン族の兄弟も神父もかっこよかった。
病気で余命短かったからモン族のため、自分のためにあんなラストだったのだろう。余命短いから無茶する主人公、他の映画でも見たことある。なんだっけ。
田舎の方はまだあんなにアジア人差別あったりするのかな、、。
イーストウッドはグラン・トリノに! 最後が素晴らしい!
流石クリントイーストウッド、早打ちのポーズは決まりすぎ!
じいちゃんになってもかっこいいですね。
私はグラン・トリノにに乗って、敵をバッタバッタとやっつける作品かと思いきや、全くちがいました(笑)
頑固ジジイの心が変化していく様子や、若い友達を大切に思う気持ちがよく伝わってきました。
最後が感動でした。クリントイーストウッドの最後って感じで感動しました。
イーストウッドはグラン・トリノになったんですね。
戦争の傷跡
戦争で人を殺した心の傷が拭えない
生と死のハザマで生きていた
何処か心を開ける事もなく
戦争を体験した人しか分からない
孤独さ 打ち解けられない心
国の勲章など要らなかった
人を殺す気持ちなんかいらない
イーストウッドはクロとかシロとかイエロー
と肌の色の差別をいつも台詞に入れてくる
社会の偏見を取り入れている
冷静に世の中に届くように
風刺を込めて
最後の撃たれるシーンは涙がドッと出ました
まさか!です
殺されることで
戦争で殺してきたことへの
懺悔だったのか(償い)
と思いました
本人に罪はないのに
戦争はどちらにしても人を苦しめる
クリントイーストウッド映画三作目
名作と言わせるだけある、ラストシーン
奥さんを亡くして、息子や孫たちからも煙たがられる頑固爺さん。
隣のモン族の姉弟との交流で、段々心を開いていく‥
あらすじだけ見るとありがちなようですが
しっかり者のお姉ちゃんは爺さんあしらいがやたらうまかったり
おとなしくて真面目な弟に爺さんがいろいろ世話焼き始めたり
いつの間にやら引き込まれます
そしてラストシーン・・
撃ち殺さずに、逆に相手に撃たせて
お縄にするとは!
そんなかっこいい守り方、今までかつてありますか。いやありません。
ガンコなオヤジとアジア人の交流、
ストーリーはわかりやすかった。
しかしこの映画に出てるようなろくでもないゴロツキの連中は、現実にもいるだろうけど、やはりこの世から淘汰されて撲滅されるべきだとも思う。
ただイキがって強がって人に迷惑かけてばかりの連中は映画であろうと不快にもなる。
でも、神父が復讐をあおるように説得するのもどうなんだろう(笑)
主人公は、最後は丸腰で復讐?訪問?しに行って蜂の巣にされて、自己犠牲でそのゴロツキを捕まえさせたんだろうけど、あんな終わり方はさみしかったなあ。
あと、アジア人の男の子、タオが、サッカーの久保建英に似てるような気がした。
タイトル程グラントリノは象徴はしてない
グラントリノは言うほど象徴ではなかったが、
ウォルトと重ねたのかもしれない。
偏屈な年寄りが妻を失いますます、頭の硬いジジイになっていくが
隣に住んでいるおせっかいなタイ人の娘とその弟に段々と心を
開いてゆく様が自然でよかった。
ラストはほぼ自殺みたいなものだったが、
銃撃戦とかにならず自らの生命を差し出すことで
タイ人一家を救うやり方は納得行くものではなかったが、
自分の寿命と人間らしい付き合いを思い出させてくれた
お礼と言うことなのだろうか、やるせない結末だった。
ラストに至るまではわりとほのぼのした展開だったので
スーが襲われる展開は衝撃的だったが。
泥棒から友人へ
タオとスー、これからの未来がある若者に
ウォルトが与えたものは一生のものだと思います。
懺悔も最期も遺言もウォルトらしい
隣にこんなポーランドジジイいたら
とりあえずエビスビール持って行きます。
結末は悲しいけれど
ウォルトと出会ったことによって
タオとスーがたくましく賢い大人になるであろう
希望もある爽やかな終わり方。
ウォルトもグラン・トリノを託せる友人と
最期に出会えて幸せだったと思います。
タオには今後もあそこで髪を切ってほしいな。
また好きな映画に出会えました。
意外な結末
客観的にみてクリント・イーストウッド監督作品はいい映画が多いと思う。ただ、ほとんどの場合、(個人的な感想だが)後味が悪い(というか、切ない)。
最後、主人公がダーティーハリーやマカロニウェスタン(特に夕陽のガンマン)のように悪者達をやっつける展開を(ダメもとで)期待していたのだが、残念!
ミリオンダラーより好き
いやー、クリントイーストウッド渋い❗️
最愛の妻を亡くし家族からは疎まれ
唯一の勲章では朝鮮人の若者を殺した罪悪感と共に生きている毎日に
隣に越して来たモン族の変な隣人との交流から物語は始まる。
当たり前だけど
誰かとの交流から物語は始まる。
それはある人ににとっては悲しみで終わり
またある人にとっては怒りで終わるのかもしれない
ウォルトは自分の最期を愛する隣人のために捧げた
それはうまくいかない家族との間で肺病で死ぬよりはずっと幸せだったに違いない
グラントリノもただ磨いてそこにいるよりも
他者との関わり(ドライブ)により
より一層の価値が生まれると気づいたラストが
悲しくも清々しい。
今頃って感じですが
観たつもりになっていて、見損ねていたもの。思い込みは怖いです。この映画制作ロバートローレンツさん良く見かけますね。調べたら面白いものばかり。クリントイーストウッドとも良く一緒に仕事されていますね。この映画ではクリント氏の息子さんがチョイ役で出てきました。「運び屋」では娘さんが。カッコいいお爺さんと共演出来て良いですね。タオが相続の場で見せた表情がやや軽くて嫌でしたが、爽やかに終わるにはああするしかなかったのかな。愛車グラン・トリノもカッコいい!クライマックスでは思わず泣いてしまいました。余命幾ばくもないウォルト、この方法で隣人を守る事がベストだと決断したのでしょう。しかし決行前に犬を預け、スーツを新調し葬儀や遺言の準備をするとは・・完璧な終活でした。
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