グラン・トリノのレビュー・感想・評価
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ヴィンテージな最期、そしてラストカットが素晴らしい。
○作品全体
思想や思考が凝り固まった老人がその心を次第に変化していくヒューマンドラマではあるが、その根底にあるのは妻が死に、自身も病に冒された状況での「エンディングノート」。
昔は国を守って戦っていた男は年老いて家族も守る対象ではなくなり、いつしか逆に心配される側になっている。守るべき領土は自宅の庭になってしまった。過去を回顧するばかりで目の前の世界が矮小化しているコワルスキー。その目の前に現れたのが、今一度世界を開かせてくれるスーだ。自身の守りたいものを再び手に入れたコワルスキーが、幾度もこぼれ落ちそうになる「守りたいもの」を静かに拾い続ける姿は不器用ながらとてもカッコよく感じた。
自身の命が短いことを悟って自ら死に場所を選ぶような最期は「旧態依然」というより「ヴィンテージ」という言葉が相応しい。
ラストカットの街を走るグラン・トリノがその「ヴィンテージ」の輝きを目一杯表現しているようで、これがまたかっこよかった。
○カメラワークとか
・やっぱりラストカットが良かったな。グラン・トリノが走り去った後もFIXで撮り続ける道路。行き交う車は様々だけど、同じ道路を走っていて、その先も走り続ける…と言ったような。作品の余韻の残し方としても素晴らしかった。
大衆ウケドラマ
レビュー評価高いしさ、面白いって聞いたから、期待して観たけど…
感動を狙いすぎて無理だった。
最後までみたけど、途中で集中力は切れた…。
ドラマを描くって難しいのはわかるよ。けど、理想のドラマを詰め込みすぎ。
人物の心情・言動に違和感しか無くて、感情移入できなかった。
不器用な男の生き様
クリント•イーストウッド監督の作品はとても繊細かつリアル。そして強烈なメッセージを放つ!
男は牧師の呼びかけに答えた、俺は冷静だと。そうか、そういうことか。すみません、あなたの生き様に涙が溢れて止まりません
ウォルト・コワルスキー
の前半のYellowに対する偏見は、案外監督自身の偏見に近いものだったのかもしれません。
それでも、知り合うことによって、人は理解し合える。私はそう受け取りました。
傑作。
グラン・トリノの走り去った姿が心に残る。
<追記>
ふと、クリント・イーストウッドの「危うさ」も感じてしまった。
死にかけのおじいさんが最後に気のいいニートの若者を一人前の男にして...
死にかけのおじいさんが最後に気のいいニートの若者を一人前の男にして、ごろつきにならないようにする話。
説教臭くなりそうなところをじいさんものダメなところをたくさん見せることで回避。
映像は作りすぎないけど構図できれいに仕上げてきている。
説明描写は少ないものの、しっかり見ればストーリーは誰でも理解できる簡単な内容。
しかし、それぞれキャラクターの作りがしっかりしているので退屈しないし、見ごたえもある。
文句なしの良作。
凄惨な戦争時代の話も言葉のみでマイルドテイスト
目で見える美男美女は登場しない。
視覚的に一番魅力的なのはグラン・トリノかな。
クリント・イーストウッド演じるウォルトが、身の回りで起こることに一喜一憂しながらもマイペースを維持し自分のスタンスを崩さないのだが、徐々に態度がアップデートされていく様子が見どころ。
最後まで目が離せない。
ラストは大満足。
凄惨なシチュエーションも映像的に抑え気味にしているマイルドな演出のおかげで、万人にお勧め出来て良い。
クリント・イーストウッドが主演・監督するヒューマンドラマ映画。元...
クリント・イーストウッドが主演・監督するヒューマンドラマ映画。元軍人で心を閉ざした頑固な老人が、アジア系移民・モン族と接触することで最後の行動を選択する。
喀血シーンが繰り返されていることから、主人公は進行肺癌に罹患し余命が短いことが示唆される。どうせ散る命なら意味のあるものに、また生きてるうちに朝鮮戦争の贖罪も・・・なのだろう。この死期間近という設定があることで「最後の行動」がより意味深いものになっているように思う。
魅力的なストーリーを優先するのではなく、主人公のこまやかな心情を丁寧に描き出す事に注力されている。またその心情描出はセリフではなく映像で表現されていて、小説ではないが文学臭を感じる。
単なる娯楽映画と一線を画した余韻を残す「文学的映画」と言える。
なお「グラン・トリノ」とは1968年~1976年にかけて販売されたフォード・トリノのうち、第3世代(1972~1976年)を指す。この映画を契機に1972年製グラン・トリノは注目を集めるようになったとのこと。
ウォルトのギャップが魅力的
主人公ウォルトは偏屈で昔気質なじいさん。息子はおろか孫にまで煙たがられている。そんな彼が、モン族を初めとした周囲の人々との関わりを通じて、男気、正義感の強いところ、面倒見の良いところ、意外とユーモアもあるところなど、良いところをたくさん見せてくれる。取っつきにくいが深く知ると実は面白い人、というギャップがあるのが魅力的。人物の意外性というのは、その人の魅力を増幅させることが分かる。
映画ではウォルトとモン族の少年タオとの交流を中心に描かれているが、時々出てくるヤノビッチ神父も魅力的だ。ヤノビッチ神父はウォルトに、神父のマニュアル通りのことをしているだけの若造と罵られる。しかしウォルトと付き合い、その男気や人生経験の深さに触れると、彼も変わってくる。神父のマニュアル通りではない、芯の強さを見せるようになる。そのため、元々の真面目で誠実な彼の気質に加えて男気も備わり、人間的な魅力が増した。彼は、ウォルトと付き合うことで一皮剥けたのだ。
そりゃあ選択肢としてはアリだろうが、選ぶなよぉ..... 好き嫌い...
そりゃあ選択肢としてはアリだろうが、選ぶなよぉ.....
好き嫌いで分けられない、凄まじい映画。得難い体験なので☆5つ。
【怠慢かましてよかですか?】
ごめんなさい。
あまりに悲しくて、彼の生き方を手放しで応援できない。
追い返そうとした東洋系隣人がビール持ってきたら「あぁもう、入れ入れ!」みたいに家に上げたり、
言葉の通じないおばちゃんたちに囲まれて「・・・はは、美味しいねぇ」って愛想笑いしながらぎくしゃく食事してるコワルスキーさんが、とても愛おしかったから。
そういう面も持ってるコワルスキーさんが好きになったから。
完璧な生き方を貫けないとだめですか?
スローダウンして、ゆるゆる終わりを迎えるのはだめですか?
悲劇の引き金を引いたのは自分だし、
背負ったものに落とし前つけて去る潔さとか、
一度は必ず迎える死のカタチを自分で決定したい気持ちとか、
ンなこたァ分かッてンだよぉ!!!←誰に怒ってるんだろう
やり場のない憤懣や拭い去れない後悔を、一挙に精算できる機会に恵まれた彼は、幸福かもしれない。
でもさ・・・割り切れない残滓を抱えながら、
周りの人たちと些細な一喜一憂をともにしていく生き方も、
幸福と呼んではいけないのでしょうか。
そういうだらしのない生き方は、ダメですか?
選んじゃったか、それ。うーん・・・
悲しいですよ。私は悲しいですよ。
ウォルトは他人がやることが気に食わない頑固親父 みんなから敬遠され...
ウォルトは他人がやることが気に食わない頑固親父
みんなから敬遠されている
朝鮮の戦争で何人も殺した
隣のモン族にはすぐ心を開いたけどなんでだろ
子どものとの付き合いがわからなかったことも懺悔の一つだろうけど、やっぱり一番は戦争なんだな
頑固親父が心を開いていく様は良かったな
最後も予想外だった
悪態ジイさん‼️
かつてのアメリカ黄金期の栄光を引きずる孤独で偏屈、しかも人種差別主義者の老人が、隣人であるアジア系移民のモン族の少年をはじめとする、その家族と交流していくうち、絆を深めていく。そしてある事件が・・・。クリント・イーストウッド監督扮する骨太親父による説教&鉄拳制裁&自己犠牲映画‼️もっとよく言えば、人生の究極の選択映画‼️モン族の少年を一人前のアメリカ男に鍛え直したり、非道の限りを尽くすギャングたちに「キサマらぁ!!」と怒りの銃弾をぶち込む?ぶち込まれる?教育的指導したり、まるでイーストウッドの映画人生が集大成されたような物語‼️泣けます‼️クライマックスでポケットから "マッチ" を取り出すときのイーストウッドの表情‼️忘れられません‼️ラストで聞かせてくれる歌声‼️絶品‼️上手すぎ‼️この作品を象徴する72年型グラン・トリノもカッコ良すぎ‼️欲しーい‼️
イーストウッドの贖罪的な映画かと
今までのイーストウッドの正義感が間違っていたと大々的に映画で表現した映画だと思いました。ダーティハリーに代表されるように、悪を駆逐するためには、何をしてもよいような志向の作品に出演してきました。しかし、彼は、そうしたアメリカ的な価値観が間違いだったと気づいたのでしょう。正義の名を借りた悪の方が質が悪く(「許されざる者」)、言い換えれば、それはアメリカなどの先進国側なのだと。劇中、アジアに戦争(朝鮮戦争)に行った時に、彼らはイデオロギーなどではなく、ただ自分の国を守ろうとして戦争をしていたことを告白しています。それ故に、映画の中では、アジアの少数民族モン族との交流に気持ちが傾いていき、アメリカの病んでいる若者たちと戦います。そして、解決の仕方は、悪を駆逐するのではなく、自らを犠牲にして守ること。暴力を更なる暴力で解決しようとしても、暴力の連鎖が生まれるだけ。(現在の戦争のように)今までの考え方の間違いに気づき、自分たちの姿に気づけ!というメッセージが強く胸を打ちます。そう思ってみると、彼の並々ならぬ決意が伝わってきます。きっと、朝鮮戦争に行ったことで、イーストウッドはトラウマに悩まされていたのでしょう。常軌を逸した行動や嗜好も、そこから生じたものだったのかもしれません。
最後、撃たれて倒れている時は、十字架の恰好でした。現実に対応していない宗教を嫌いながらも、自らを犠牲に捧げる姿は、より現実的な殉教者のようにも見えました。
この後味は才能がもたらすもの
イーストウッド演じるウォリスの悲しくも誇らしい決断。
その考えがじわじわ感じるところからすでに
感涙の波がやってきたのですが、
意外にも観ていて涙があふれ出るという感じではなく。
観終わったときには暖かな未来への展望を感じる。
凡庸な作品だったら「ああ、かわいそうだね、えらいね、でもわすれないよ(涙)」
的なところで終わったのかもしれないけれど
そこからさらに一歩があるのがすごいところ。
それは考える余地を観客にゆだねてる部分のせいもあるのかもしれない。
そういう意味ではイーストウッドは
観客というものに夢と希望を抱いてるように思う。
新人の脚本というのも驚く。
ある意味うまくまとまってるな、というものだったのかもしれないが
いい題材でうまい料理人がやるとこうなる。
それにしても男の魂は受け継ぐのに資格がいるのだな。
こいつになら、と見込んだ相手にしか継承されないのだ。
この映画は男の子の映画だなあと思った。
いい車、偏屈だけどクールなジジイ、かわいい女の子、マイ工房。
最近ちまたで言われてる草食男子はツボが違うのかな?
女子にもぐっときますけどね!
人生の10本に入りそうなくらい、胸にズシンと染み入る映画
前半、主人公の意地っ張り加減や人種差別的な悪口をボソッと言うのがブラックコメディな感じがしておもろい。笑
派手な演出やBGMはないけど、テンポ感が良くて全く飽きずに見られる。
スーとボーイフレンドが黒人チンピラに絡まれるシーンで、「兄弟なんて言うな。どう見ても違うだろ。」とツっこむシーンが好き。笑 後半の主人公との良い対比になってると思う。
あと、タオが一生懸命仕事をしてる画と、主人公がタバコを吸ってる画を何度も交互にうつしてるシーンがシュールすぎてお気に入り!
すぐに銃を持ち出すのも、「お決まりのやつ」って感じで見てておもろい。
「なんて言ってるか分かんないけど絶対こちらを嫌っているおばあちゃん」とのやり取りもとても好き。笑
グラン・トリノとタバコとビールが最高に似合う渋さに痺れる!
パン族との文化の違いに顔をしかめつつも少しずつ心を開いていく心情の変化が面白かった。
と、前半だけでも、純粋に面白く観れるのに、後半はそれを上回って一気に引き込まれる!
家を襲撃され、スーがボロボロで帰ってきたシーンから緊張感が流れはじめる。あまりに理不尽な暴力に、「どうか皆が幸せになれるように…」と願わずにいられない。
27歳の牧師との懺悔室での会話、地下室に閉じ込めたタオとの最後の会話、少しずつ、自分の罪について語り始める主人公。特にタオとの会話での「勲章なんてそんないいものじゃない。俺が殺したなかにはお前くらいの子どももいた。それが忘れられない」みたいなセリフから(細かいセリフうろ覚え)、タオの面倒をみることも助けたことも、自分自身への罪滅ぼしというか、贖罪だったのかなぁなんて。
そして、衝撃のラスト…。彼が考えぬいた末の1番の正しい道だったに違いない。
お互いに、「友達」と言い合った2人の関係は、とても尊かった。
「グラン・トリノ」のタイトルの回収もとても渋くて良い…!
男のとても寂しくて、すごく悲しい物語。そして例えようの無い何かをもらう物語。
愛する妻を亡くした男は
隣に住むアジア人を軽蔑する。
しかしその家族と仲良くなった男は
血を分けた家族にない温もりを感じる。
平和な日々は長く続かず、
その家族の悲劇を切っ掛けに
男は人生最後の復讐に燃える。
戦争を経験してきた男。
途切れた肉親との絆。
男の新しい希望は
愛車と共にある。
人の心の中に何かを留める
クリント・イーストウッドらしい
とても静かで力強い物語。
必ず例えようの無い何かが残る。
※
移民社会アメリカ
ウォルトは朝鮮戦争の退役軍人でポーランド系移民の子孫である。デトロイトの自動車産業で組立工として働き、右肩上がりの絶頂期を謳歌し、定年まで勤め上げた。しかし、日本の安価な自動車がアメリカで売れ始めると、アメリカの自動車産業は衰退していき、デトロイトから工場が撤退し多くの失業者が生まれた。産業がなくなった都市からは人がどんどん出ていき、逆に非白人の低所得層が流入してきたが、ウォルトは土地を離れない。
タオのルーツであるモン族とはヴェトナム戦争時にアメリカが軍事的に利用したラオスの山岳民族である。アメリカがヴェトナムから撤退した後、ラオスは北軍に占領され、モン族は迫害されたため、アメリカに逃げ込んできた。
そんな背景があって出会ったウォルトとタオであるが、ウォルトはアジア人に対して最初は偏見にまみれていたものの、モン族との心の交流を通して人としての温かさを感じようになり、やがて気持ちが変化していく。また、朝鮮戦争で若い朝鮮人を殺したことをトラウマとして抱えていたが、その贖罪感情からタオの教育係となって父親のように見守るようになる。
アメリカは人口増加を続けていくと、白人と有色人種の人口比は逆転するといわれている。建国者としての白人が少数派になるのはもはや時間の問題である。いつまでも多人種や他民族を認めないという姿勢は通用しないだろう。そこに立ちはだかる壁は打ち壊し、アメリカの精神を継承していかなくてはいけないというメッセージがこの映画から感じられた。
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