「選択と偶然」ミスター・ノーバディ mars violetさんの映画レビュー(感想・評価)
選択と偶然
観た、というよりは体験したと言った方がふさわしいような映画でした。「トト・ザ・ヒーロー」を観てから忘れられないジャコ・ヴァン・ドルマル監督の新作とあって、期待が高まりすぎて観に行くのが怖いぐらいでしたが、期待以上でした。映像も音楽の使い方も素晴らしかったですが、難解、かつ重くなりそうなテーマを可能な限りわかりやすく仕上げた構成力は奇跡のようです。編集に一年半もかかかったというのも納得です。
人生は自分自身の選択と偶然の連続で、どれか一つが欠けても今現在の自分という人間は存在しなかったのだということは頭では分かっているつもりでしたが、この作品を通して「頭」ではなく「体験」でそのことをより深く感じました。今という時間が儚くも思えるし、だからこそかけがえもなく思えるような…。
高校生の息子と観に行ったのですが、20年後に自分の子供と一緒にジャコ・ヴァン・ドルマル監督の新作を観ている自分というものを、「トト・ザ・ヒーロー」を観た時は想像すらしていなかったことを思うと、本作のテーマとも相まってなんだかめまいを覚えました。息子の感想は「ストーリーはちょっと難しかったけれど、映像の凄さに最後まで圧倒された」でした。
自分の好きな監督なのでどうしても子供に見せたくて連れて行ってしまいましたが、親子で観るには結構気まずいシーンも多かったことを一言付け加えておきます(笑)
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