ロルナの祈りのレビュー・感想・評価
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不都合な現実。
名画座にて。
この名画座では、ダルデンヌ兄弟もお気に入りのようで^^;
よくかけてくれる。
おかげさまで…気付いたら、彼らの作品は全部観ている。
切羽詰まった緊張感とか、ずっと後ろ目線のカメラ撮りとか、
音楽などまったく使わない人たちだったと思う。
だから今回は、ちょっとビックリした。あまりにも普通で…。
まぁいつも通り、唐突に話は始まるんだけど(説明すらない)
観ていく中で主人公に感情を巡らせるように作られている。
このロルナという女性は、実はアルバニアからの移民で、
ベルギーで国籍を得る目的で偽装結婚し(つまり組織に加担)
相手の麻薬中毒患者を最後には殺そうと謀っている…という
いわば、れっきとした犯罪者側なのだ。
まったく穏やかな話ではないのだが^^; 彼女にとっては、
その相手は誰でも良かったわけで、金と国籍が欲しいだけ。。
なので、相手に対して冷たく振る舞い、話も聞いてやらない。
ところがその相手の方は、彼女が生きる糧となってしまった。
彼女を希望として、クスリから足を洗おうと努力さえする。
とはいえ…行きつ戻りつの禁断症状でxそうは巧くいかない。
そうこうしているうちに、次のお相手、ロシア人との再婚を
狙う組織は、サッサと男を始末しようと手配し始めるのだが…。
まったくもって、恐ろしい話だ。
私たち日本人には、おそらく身近に想像すらつかない。
驚くほど質素で真面目な生活ぶりから、困窮と麻薬という
どっちが地獄だ?的な物質をはじき出し、さらにその中へ
人間的な愛情まで芽生えさせてしまう、という…物凄い
化学反応を狙ったつくりに感じるが、話は最後までシンプル。
彼が、どうなって。彼女が、どうするか。
そして彼女は、ラストでなにを祈るのか…。
いつものように兄弟は、犯罪者を犯罪者としては裁かず、
深遠な癒しの世界へ引っ張っていってしまうのだが、
今回はエンディングに音楽を入れることで、更に高めている。
(結局、自分に嘘をつかない生き方がいちばんなんだわね。)
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