「これぞ《箱庭ミュージカル》」ハイスクール・ミュージカル ザ・ムービー 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
これぞ《箱庭ミュージカル》
観る前にネットで評判を確認すると『1』と『2』を事前に観ていないと解らないかも知れない…と書き込みが有って不安だった。
正直に書き込むと、ミュージカルファンを自認しているのに『1』『2』共に未見でして…。
冒頭のタイトル画面にはズバリ《ハイスクール・ミュージカル3》と出る。
なる程、出演者達が1年事に成長して行く話な訳ですね。
たった今観終わった訳ですが…。
これだよ!ミュージカルの明るさ。楽しさ。そして意味の無さは。
こうでなければミュージカルじゃない!
『シカゴ』や『ムーランルージュ』では味わえ無かった、ミュージカル特有な底抜けの明るさが嬉しかった。
こんなに観終わって早く感想が書きたかった映画は最近では稀でしたね。
ハリウッドミュージカルには伝統的な明るさが欠かせ無いのですが、実はミュージカルとゆうジャンルの中で学園ミュージカル作品の本数はそれ程多くは無い。
いや、あるにはるんですが、出演者の年齢が高過ぎてとても「これ学園物?」って感じの代物が多い。
純粋に学園ミュージカルと言えるとしたら80年代では『グリース』(ちょっと微妙で笑っちゃうけどね)『フットルース』と言ったところ。
黄金の30〜50年代だと1番有名なのは、ミッキー・ルーニー主演の《アンディ・ハーディー》シリーズとか、『BEST FOOT FORWARD』 それにチャールズ・ウォルターズ初監督で、『雨に唄えば』『踊る大紐育』の脚本家コムデン&グリーン初脚本作品の『GOOD NEWS』等が有名なところ。
元々ミュージカル自体がバックステージミュージカルとして発展して来た経緯から、意外と学園ミュージカル物はそれ程多く無いのかも知れない。
その中からは、前に期した《アンディ・ハーディー》シリーズには途中からジュディー・ガーランドとゆう稀代の大スターを抜擢。
彼女は名プロデューサー、アーサー・フリードの秘蔵っ子で、『オズの魔法使い』での成功によって、当時のマネー・メイキングスターであるミッキー・ルーニーとのコンビが出来上がり、大旋風を巻き起こす。この名コンビにブロードウェイからワーナーミュージカルを経てバスビー・バークリーとゆう天才振付師を加えた事で、『青春一座』『GIRL CRAZY』『ブロードウェイ』と言った佳作・秀作・傑作を生み出した。これらは《箱庭ミュージカル》として一代ムーブメントを巻き起こした実績があるんですが…。
それだけにこの『ハイスクール・ミュージカル』シリーズも、この《箱庭ミュージカル》の流れを踏襲しているのは間違い無く、その辺りもミュージカルファンとしては涙がちょちょ切れてしまう位の嬉しい誤算。
劇中にはフレッド・アステアにオマージュを捧げるかの如く『恋愛準決勝戦』でのあの《天井ダンス》もちょっとだけ再現。
主演の2人が踊る場面では、昔ならば主演は“エレガントに踊れて当たり前”の時代。アステア&ロジャースを始めとした歴代のベストカップルと比べてしまうと流石に観ていて辛いところだし、ミュージカルナンバーの中に、ジャズを使った場面も無ければタップダンスのシーンも無いのは個人的には残念至極。
でも今やミュージカル不毛の時代ですからね。
寧ろ主演2人の覚束ないダンスには、逆にピュアな感じが伝わって来てなかなか好感が持てました。
出演者達が歌い踊るミュージカルパートでは時折バスビー・バークリーを意識したショットも有って少しニンマリしてしまいます。
また一種のバックステージ物としても見れるので、ミュージカルに嫌悪感を持つ人でもある程度は納得して貰えるでしょう。何よりも楽しいしね。
シャーペイー役のお姉ちゃんのキャラクターが面白かったな〜。最後に裏切られながら…ってオチまで楽しめました。
《カレッジ編》は製作されないの?
もしも製作されるのならば、初日には真っ先に劇場に駆け付けますよ。
(2009年2月15日ユナイテッドシネマ豊洲/スクリーン2)