真夏のオリオンのレビュー・感想・評価
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人間は兵器じゃない
素晴らしい頭脳戦と音楽
原作は未読である。2009 年公開の映画であるが、不明にも知人に教えられて初めて観た。潜水艦映画に外れなしとはよく言ったもので、本作も涙なしには観られない非常に見応えのある大傑作だった。
大東亜戦争末期、倉本艦長の指揮下にある日本海軍潜水艦イ-77は、沖縄に向かう米軍の物資輸送を妨害すべく、タンカーを目標とした魚雷攻撃の任務を遂行していた。僚艦のイ-81には、同期の有沢艦長が乗っており、有沢の妹で音楽教師のいずみと倉本は恋仲である。倉本のお守りにと、いずみが作曲した曲を書いた楽譜をプレゼントしたことが物語の発端だった。
イ-77 とイ-81は5隻の潜水艦で同じ任務に就いていたが、米軍の駆逐艦パーシバルとの猛烈な頭脳戦に突入する。数少ない魚雷の他に、艦上には2隻の人間魚雷・回天が搭載されている。これらを駆使した戦闘は息もつかせぬ緊張感が溢れるもので、「沈黙の艦隊」を彷彿とさせるものだった。
駆逐艦の攻撃は主に機雷で、爆発する深度を設定して投下することができる。機雷はドラム缶程度のサイズなので、駆逐艦には大量に搭載することが可能であり、残量の心配なくどんどん投下が可能である。一方、潜水艦の主力武器は魚雷で、この当時は直進するだけだったので、潜望鏡での目視が必要であり、搭載数にはせいぜい 20 本程度という限りがあった。
この時代の潜水艦はディーゼル機関で動いており、浮上すればエンジン航行ができるが、潜航するとエンジンは使えず、バッテリーでのモーター航行となる。バッテリーの充電は浮上中にディーゼル機関で行う必要がある。駆逐艦と潜水艦は互いに相手の航行音を探知することで所在や航行速度を知って相手に攻撃をかけるので、艦内で音を発するのは厳禁である。モーター航行でも存在は探知されてしまうので、存在を探知されないためには機雷の爆破後に発生する泡の中に潜り込むか、全ての動力をオフにしてじっとしているしかないが、駆逐艦はアクティブ ソナーを打てば潜水艦が静止していても位置を特定することが可能である。
こうして考えると駆逐艦の方が有利に思えるが、駆逐艦は海上で平面的な行動しか取れないのに対し、潜水艦は海中で3次元での航行が可能であることが有利になっている。
オリオン座は冬の星座としてよく知られているが、低緯度の北半球では夏でも夜明け前のごく短い時間だけ眺めることができる。これを幸運のシンボルとして潜水艦乗りは認識していることから、いずみが作曲した曲のタイトルにもなっている。この曲が実に聴く者の胸を打つ名曲であり、音楽担当の岩城太郎の真価が発揮されている。
回天の乗組員も潜水艦に同乗しており、命令があれば直ちに発進して敵艦に体当たりする覚悟でいる。彼らの緊張感は察するに余りある。艦長が回天の発射を命ずるということは、乗組員に死ねと命令したのと同じなのである。
魚雷の数も少なくなり、満身創痍の潜水艦で最後の決戦を覚悟した倉本艦長は、艦の廃棄物を投棄する際に、空き瓶にいずみのくれた楽譜を入れておいたため、敵駆逐艦の艦長の手に渡ることになる。搭載した回天を含め、全ての手段を駆使して乗組員の生存と攻撃の成功を図る倉本艦長の行動は見事だった。
何と言っても胸打たれるのは、潜水艦の中で「真夏のオリオン」が最も年少の鈴木水雷員のハーモニカで奏でられるところである。潜水艦の中ではハーモニカも厳禁なのだが、最後の闘いを決意するシーンでのこの曲の演奏は、乗組員全員に何よりの励ましとなると共に、観るもの全ての胸を打つ名シーンだった。
倉本を演じる玉木宏は当たり役で、オーケストラの指揮者になりたかったというジョークも、2006 年に放送された「のだめカンタービレ」を観た者にはウケたことだろう。最年少の乗組員でハーモニカ吹きの鈴木水雷員は、来年の大河ドラマ「豊臣兄弟」の主役・仲野太賀だった。イ-81の有沢艦長は存在感があるのに見たことない役者だと思ったら、本業は歌手だとのことである。艦体を金属工具で叩いてモールス信号を送るシーンは胸が痛んだ。その妹役の北川景子は、凛とした表情が素晴らしく、「アルマゲドン」で父親が死んでいるというのに満面の笑みで恋人に抱きついたリヴ タイラーとは対極の表情が見事だった。
この映画の価値を爆上げしていたのが岩代太郎の音楽である。エンドロールでは彼ならではのオーケストレーションで「真夏のオリオン」が流されると期待したが、全く別の歌謡曲が流れてきたのはやや肩透かしだったものの、エンディングでピアノ独奏で聴かせてくれたのでいくらか慰められた。
(映像5+脚本5+役者5+音楽5+演出5)×4=100 点。
こんな一面もあった太平洋戦争
死なない戦争映画。ノンビリが新味。
ケミストリーの堂珍、映画初出演作品
太平洋戦争のころ、敗戦の色濃い日本軍の中で、最後まで果敢にアメリカ軍に戦いを挑んで行く、潜水艦のお話。
艦長の玉木宏がカッコイイ!!でも、艦長としてはイマイチで、責任感に欠けるというか…
回天の乗組員に「だって、もったいないじゃ~あ~ん」の一言で、回天に乗せないし。で、そのせいで敵艦を倒せなかったから、結果的に仲間を危ないメに合わせちゃって。…やっぱり、艦長としてダメジャン って思うんだけど、でも、イケメンだから、クルーがみんな慕ってくるんでやんの…なんかイケメンってズルい…
機械室の吉田栄作がカッコイイ!!!
そして、ドランクドラゴンの鈴木がカッコイイ!!
そしてなにより、堂珍がカッコイイ!!!
ケミストリーの堂珍が映画初出演です。
演技、下手なんじゃないか?と思ってみていたけど、これがなかなか。うま下手でした(笑)
名言も残していたしね。玉木宏に対して、「ショパンだ」。なんていうアタリがチョーツボ!!!!
とまぁ、こういう感想になりました。潜水艦 vs 戦艦の戦い方とか、普通に面白いところもいっぱいありました。
もう一息
テレビで放映されて見ました
日本の戦争映画の転機か?
日本映画における夏の風物詩ともいえる戦争映画だが、一貫したテーマは軍政府の愚かさだった。ところがこの作品、ある作戦行動に的を絞り、海上と海底を舞台にした駆け引きに焦点を当てている。史実に捕われない作品を作り上げた勇気がいい。これを機会に、もっと割り切った娯楽作品が生まれることを期待する。戦争の愚かさは、見る側が悟ればいい話。そろそろお仕着せはやめてほしい。
VFXはしょぼいが、作品としては見応えがあり、スコープ・サイズに意気込みを感じる。
カレーライスがうまそうだった。「おい、飯にしよう!」って食えるものがあると生きるための戦いにもなるが、食えるものがないとどこかの国みたいに自虐的な行動に出るんだな、きっと。
潜水艦って、重いんじゃないの?
全体的にスケールが小さく、ちまちましている。
玉木宏が潜水艦の艦長って、設定に無理があるような気がします。
若すぎて・・・。
太平洋戦争末期という設定になっていますが、「戦争をしている」という切迫感、悲壮感、緊張感がまったく伝わってこない。
細かいことですが、当時の海軍なんて言ったら、それこそ規律が厳しくて
上官にむかって話す時は「~であります!」と直立不動で答えるんじゃないの?命令されたら必ず「復唱」するんじゃないの?
艦長自ら「みんな、ありがとう」なんて軽い言葉吐くわけ?兵隊たちは、皆、坊主頭なんじゃないの?カレンダーに西暦なんて載せちゃっていいわけ?
この作品のどこにも琴線がくすぶられる部分はありませんでした。
SFX、ヴィジュアルエフェクト、船(潜水艦、敵艦等)のミニチュアの出来もお粗末。
撮影が、拙いセット内で行われているのがありあり・・・。
「オリオンよ・・・」のキーワードは一体誰に対して言っているの???
真夏のオリオン
池上司氏の原作、また映画原作「真夏のオリオン」を読み、とても感動したので映像化を期待していましたが、なんか不完全燃焼でした。キャストにさほど問題はありませんでしたが、駆逐艦パーシバル、イー77の対決のシークエンスがなんか間延びして「手に汗にぎる」感じがしませんでた。名作「眼下の敵」を再現したかったようですが、ちょっと及びません。むしろ同じ福井作品なら前のローレライの樋口監督の演出のほうが良かったと思います。メキシコ海軍の実物駆逐艦を使用したのなら、ミニチュア、CGのパーシバルも使用しイー77との駆け引きにもっとスピード感と迫力をもってきたほうが良かったと思います。CGの爆雷攻撃のもっと迫力出せたと思います。回天を囮に使うのもなんか・・・間延びで、「してやったり」みたいな感じはしませんでした。こんなことなら原作通り敵は重巡インデアナポリスでも良かったかもしれませんね。キャストは良かったけど、とにかく戦闘シーンが不完全燃焼。これは演出と編集の問題なんでしょうか?まだプスプスして面白くないので一言書かせていただきました。
艦長と呼ぼう
玉木宏の艦長がカッコよかったです。主人は、艦長はもっと年配の落ち着いた役どころを期待していたみたいですが、逆に戦争末期のあの時期なら若い艦長になりますよね。
戦争映画の「男たちの大和」が動なら、「真夏のオリオン」は靜という感じがしました。一人一人が責任と誇りを持って行動していることに感動しました。戦争映画にありがちな、理不尽な命令や、やらされている感がなくて、命がけで働いているという感じ。「わたしは貝になりたい」のストーリーとすごくギャップを感じました。一方は、夫を助けたい一身で署名を集め、あだとなって処刑され、一方はたった一枚の楽譜が皆の命を救った。戦争の招くうねりのようなものを感じる。
戦争映画を観るたび、悲劇は繰り返してほしくないと思うし、今の平和に感謝したい気持ちになります。こんな気持ちを忘れないためにも、このような映画は残り続けるべきと思います。
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