ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポのレビュー・感想・評価
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ややこしい男・・・
太宰治作品のエッセンスを忠実に映画にしているように思う。
全く理解できない訳じゃないけれど、なんてややこしい男なんだろう大谷・・・。
自分は浮気しまくりの癖に、妻の浮気は考えるだけで耐えられない・・・。
裕福な家に生まれ、恵まれた環境にいることが「恥」になるなんて、わからない。
普通に幸せを享受すればいいのに。なんて屈折した性格なんだか!
でも、女はやっぱり、こんな謎めいた(謎すぎる!!)男に惹かれると、離れられなくなるものなのかなぁ。
ま、私は絶対こんな男いやですけど!!!!
映画自体は、よかったです。
madrigal of decadance
原作は未読です。
キャストはさりげなくかなりの豪華勢を起用しています。
そのさりげなさが好きです。
だけどなんだか、本で読んだほうが良いのではないかと思える作品でした。
廃退的なモラルを掲げる主人公の大谷(浅野忠信)。
彼の退廃的な空気がこの映画全体を包み込んでいます。
デカダンな空気感。
暗い。
けれど美しい。そして儚い。
多分これは活字で、言葉の流れで物語られたほうが良いんではないのだろうかと思いました。
原作も読んでみようと思いました。
わかったようなわからないような。
非常に文学的な作品。
であるが故に、文学に収めといたほうが良いのではないだろうか? と。
女優陣が素晴らしい
とにかくキャスティングがいい。無駄がない。中でも女優陣が素晴らしい。室井滋(椿屋の女将)は戦後のどさくさを逞しく生きる女に見えるし、広末涼子は昭和20年代の女優を連想させる。松たか子は、持ち前の明るさを発揮しつつ、弁護士の辻(堤真一)を訪ねた際には、口紅一本と階段を下りる遠目の姿だけで何があったのかを連想させる。
破滅の道を進むネガティブな男に対し、妻は単にポジティブなだけでなく、愛する男のためには開き直った強さを併せ持つ。まさに女の作品だが、タイトルが欲張り過ぎ。「ヴィヨンの妻」だけでいいではないか。インパクトがある。
終戦直後の居酒屋周りの街の風情がよく出ていた。エキストラの服装や壁に貼られたビラ1枚にまで気が配られている。列車の中の雰囲気もよく出ていた。
佐知の最後の台詞「生きてればいいのよ」が印象的。
地味な作品だが、カメラと音響設計がうまい。
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