ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポのレビュー・感想・評価
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丁寧な仕事振りに驚嘆! 秋にぴったりの味わい深い映画
松たか子ってこんな色っぽい女優さんだったけか。
映画を観ながら、そんな感想を抱いてしまった。
豊かな表情、抑制の利いた動作、落ち着きのある色気——
本作の彼女はとにかく魅力的。主役として映画をぐいぐい引っ張る。
浅野忠信も相変わらず良いですね!
彼が演じる作家は卑怯で卑屈で甲斐性なし。
周囲の人を自然と不幸に引きずり込む超ネガティブ男だ。映画に登場する女性達がどうしてこんな男についていくのか僕にはよく分からんが、何だか放っておけない魅力が、確かにある。
演技だけでなく、この映画はあらゆる部分が一級だ。
過剰な説明を避け、一瞬の表情・動作・構図で人物の関係性や思考を観客に「読ませる」余地を残した巧みな見せ方。
店内の照明の暖かみや、月明かりの艶やかさ。
戦後の街並みや人々を再現する美術の数々。
1カット1カットに至るまで抜かりがない。
そのくせ、演出はあくまでさりげない。
凄い。まさしく熟練の技だ。
高架下で、夫婦2人で桜桃を食うシーンが好き。
ごみごみとした街角が、2人きりの空間に変わる瞬間が美しい。
ベテラン監督の丁寧な仕事に唸らされる一品。
秋はこういう味のある映画が似合います。
ややこしい男・・・
madrigal of decadance
女優陣が素晴らしい
とにかくキャスティングがいい。無駄がない。中でも女優陣が素晴らしい。室井滋(椿屋の女将)は戦後のどさくさを逞しく生きる女に見えるし、広末涼子は昭和20年代の女優を連想させる。松たか子は、持ち前の明るさを発揮しつつ、弁護士の辻(堤真一)を訪ねた際には、口紅一本と階段を下りる遠目の姿だけで何があったのかを連想させる。
破滅の道を進むネガティブな男に対し、妻は単にポジティブなだけでなく、愛する男のためには開き直った強さを併せ持つ。まさに女の作品だが、タイトルが欲張り過ぎ。「ヴィヨンの妻」だけでいいではないか。インパクトがある。
終戦直後の居酒屋周りの街の風情がよく出ていた。エキストラの服装や壁に貼られたビラ1枚にまで気が配られている。列車の中の雰囲気もよく出ていた。
佐知の最後の台詞「生きてればいいのよ」が印象的。
地味な作品だが、カメラと音響設計がうまい。
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