「大スケールの物語で無いなら他の部分に力を注ぐべきでは? 〔修正〕」ダレン・シャン 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
大スケールの物語で無いなら他の部分に力を注ぐべきでは? 〔修正〕
まず初めに、色々文句を書いてるのでご注意を……。
切り絵アニメのようなオープニングはなかなかステキだし、棺桶から始まる物語なんてのもそうそう無い。吸血鬼やフリークショーが絡む物語や奇妙なキャラ達はオリジナリティ十分。
それでもこのスコアを付けた理由は……ズバリ退屈だったから。
同じ児童文学の映画化で言えば、こないだレビューした『パーシー・ジャクソン』は主人公らの心理描写がほぼ皆無で共感しにくい映画だったが、派手なシーンは盛り沢山だったので難しい事は考えず楽しめた。しかし本作は、ヴァンパイア同士の闘いや奇妙キテレツなサーカスなどの場面はあるものの、画ヅラの派手さで観客を楽しませるにはちとツラい物語。
勿論、それは別に欠点じゃない。全てのファンタジー小説が壮大なスケールと決まっている訳じゃなし。
原作は未読だが、もともとの物語がスケールの大きい話で無いのなら、主人公をはじめとした数多の風変わりなキャラクターの魅力を引き出そうとしたり、その奇妙な世界観の再現に力を入れたり、何かしら観客を物語に引き込む努力が必要だと思う。
この映画にはそれがない。
主人公が豊かで幸せな生活と家族を捨ててまでハーフ・ヴァンパイアになる理由は薄っぺらいし、その主人公を逆恨みする親友の行動はほとんど理不尽だ。
物語の重要な要素であるヴァンパイア同士の戦争についてもその深刻さはサッパリ伝わらず、フリークショーのメンバーもさっくり紹介された程度で人となりはほとんど伝わらない。
ここまでキャラ描写が薄いと、若手俳優はおろか、ジョン・C・ライリーや渡辺謙といった実力派でも救いようがない。演技の上手下手以前の問題だろう。
という訳で、もっと面白くできる話だと思うのに、結局は話の筋を追うので手一杯のまま終わったという印象。
最初に書いた通り、物語のオリジナリティはあるし、活字で読んだらきっと楽しめるのかも。勿体無いです。
しかし、どうして吹替版しか上映してないんだろ?
渡辺謙が自分の役の吹替をやっているのには驚いたが(もともと良い俳優さんだし、流石に自分の役だけあって上手い)、主演クリス・ムッソグリア〔修正:役者さんの名前、間違ってました……〕やサルマ・ハエックの吹替は正直酷い。聞くに堪えないとまでは言わないけど、それに近い。
観たい方はDVDで字幕版を観る事をお勧めします。
<2010/3/20鑑賞>