「子供だったコロが、兄の死後、立派に兄の代わりに弟たちを導くところまで成長するところまでを描いた作品でした。コロ頑張ったねと拍手したくなりますよ。」ミーアキャット 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
子供だったコロが、兄の死後、立派に兄の代わりに弟たちを導くところまで成長するところまでを描いた作品でした。コロ頑張ったねと拍手したくなりますよ。
後ろ足2本と尾で直立する姿が人に似て、瞳もつぶらで、もうなんて愛らしいミーアキャットのドキュメンタリーんなんでしょう。
『皇帝ペンギン』『アース』の製作陣が制作しただけに、7ヶ月に及ぶ膨大な映像を丹念に編集して、ドキュメンタリーを超えたドラマ性のある感動作品に仕上がっていました。
アフリカ南部に広がるカラハリ砂漠。ここが舞台。スタッフは、ミーアキャットと数多くの野生動物が触れあう場所として、ここを選んだそうです。でもそこは地球上で最も厳しい環境のひとつ、苛酷な生存闘争が繰り広げられる灼熱の大地。過酷な状況で、小さなミーアキャットの一家が必死に生きていました。
主人公となるコロは、まだ生まれて3週間目。ずっと真っ暗な穴の中にいたのです。とても小さく頼りなさそう。
生まれて初めて地上に出るときの太陽の眩しさに、コロはびっくり!そして初めて家族のみんなに会ったのです。
ミーアキャットは、数十匹の大家族で群れをなしています。家族は子供達を教育し、危険から守り導くのです。人間以外に、子供を教育する習性があるのは、ミーアキャットだけだそうです。
コロの教育係は、一歳上のお兄さん。好物のサソリの捕まえ方から危険の察知の仕方まで何でも手取り足取り教えてくれます。
兄の心配をよそに、コロは勇気があり、好奇心が強く個性的でした。ついつい家族と遠く離れたところまで行ってしまうことも。集団で暮らすミーアキャットにとって、群れから離れることは死を意味します。
巨大なキリンと遭遇するコロ。大きさの違いがよく映像として表現されていました。ズシンと何度も踏みつぶされそうになります。
迷ったコロが助けを呼ぶと、兄はたとえ他の子たちを置き去りにしても、本能的に飛んできてコロを助けてくれたのです。その兄弟愛の強さは、微笑ましい限りです。
でもある日コロは夢中になってエサをほうばっているうち、ワシに狙われていることに気がつきませんでした。突然見張りをしていた兄さんは、それに気づき自ら走って、コロの身代わりにさらわれてしまったのです。頼もしい兄がいなくなる、コロには辛い出来事でした。その後の落ち込むコロの姿が印象的でした。
待望の嵐が到来し、雨が降ると羽アリが発生。飢えたコロは食べ放題のご馳走に夢中になって駆けずり回りました。でも気づくと、別なミーアキャットの群れの中に包囲されていたのです。群れが違うと、リンチにあってしまいます。
唯一、逃げ道となりそうな方向には、ライオンの群れが。兄を亡くすことで自立心が出てきたコロは、兄の教えを屈指して、無事家族の元に帰れるのでしょうか?ライオンとコロのニアミスシーンが見所です。
子供だったコロが、兄の死後、立派に兄の代わりに弟たちを導くところまで成長するところまでを描いた作品でした。コロ頑張ったねと拍手したくなりましたね。
地表温度が70度にもなる灼熱の太陽の下、暑さになれているはずのコロの家族たちでも、余りの暑さに立ったままうずくまるように足から崩れるところが、何とも可笑しかったです。
また、コブラがコロの住処の穴蔵の中まで襲ってくるところがあったのです。しかしコロの一家は決して逃げません。実はミーアキャットはマングースの仲間なので、どんな凶暴なヘビにも立ち向かうのです。そして囲まれたヘビはたいてい退散するそうです。対決シーンは、迫力ありましたね。
本作では、世界最高のスタッフが画期的な撮影技術を駆使して創り上げています。特に夜間撮影で、スポットライトを当てずにミーアキャットの自然な振る舞いをリアルに撮影した遠赤外線システムはすごいです。小型化した遠赤外線カメラは巣穴の中が、コロの一家がスヤスヤとおねむになっているところまで、映し出していました。
また本作の撮影には、もの凄い忍耐力と運必要だったようです。
最強の天敵ゴマバラワシの巣は250平方kmにたったひとつしかなく、3年ごとに1羽しかヒナ鳥を生まないのです。スタッフは数週間、1日14 時間、巣を観察して過ごしたそうです。親鳥がミーアキャットをくわえて巣に帰るシーンを収録できたのは、奇跡としていえないくらいラッキーなことだったのです。
ライオンとのエキサイティングな2ショットシーンも、これまでの動物ドキュメンタリーでは撮れていなかったシーンなんだそうです。
ミーアキャットの肩越しにライオンを見るローアングルのショットでは、二匹の大きさの違いとコロの感じる恐怖感がとてもリアルに表現されていました。
最後に、『皇帝ペンギン』では、ナレーションの軽薄さが気になりました。本作では、ナレーターは先日惜しまれて世を去った名優ポール・ニューマンが務めています。格威厳と優しさに満ちた語り口が厳しい自然に囲まれているこのドラマの語り口に、よくマッチしていました。