デイ・オブ・ザ・デッドのレビュー・感想・評価
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アクション物のゾンビ映画のなかで一番好きな作品
2008年9月上旬にシアターN渋谷(2012年12月に閉館)のスクリーン2にて鑑賞。
ゾンビ映画の巨匠ジョージ・A・ロメロ監督が1985年に放った『死霊のえじき』を『13日の金曜日 PART 2』のスティーヴ・マイナー監督、『ファイナル・デスティネーション』のジェフリー・レディックによる脚本、後に『エクスペンダブルズ』を手掛ける事になるミレニアム・フィルムズの製作によって、現代的なリメイク作として生まれたのが本作『デイ・オブ・ザ・デッド』であり、ゾンビ物が好きな自分としては、かなりの期待をして観てきました(2008年当時の事ですが)。
コロラド州の田舎街で原因不明のウイルスが蔓延し、軍による隔離が行われる。それを行った軍人の一人で、その街で生まれ育ったサラ(ミーナ・スヴァーリ)は新米のバド(スターク・サンズ)や弟のトレヴァー(マイケル・ウェルチ)らを伴って、具合の悪い母親を病院へ連れていくが、その直後に感染者が次々とゾンビ化し、街がパニック状態に陥るなかで、サラたちは同僚のサラザール(ニック・キャノン)と共に武器を手に取って、戦いながら、街からの脱出を図る(粗筋、以上)。
『バイオハザード(2002年)』と『ドーン・オブ・ザ・デッド(2003年)』の大ヒットによって、ホラー映画のジャンルからゾンビ物が一人歩きするほど、量産され、ロメロ監督は否定的ですが、走ったり、道具を使ったり、喋ったりと様々なバリエーションで製作される時代となり、本作もそれに則り、走るだけでなく、天井をよじ上ったり、銃を使えたりとバラエティに富み、ゾンビの登場部分の映像の動きがヤケに素早く、話のテンポと勢いもそれに影響されるかのように駆け足なように見えるぐらい、痛快で爽快感に溢れ、オリジナルのファンやゾンビ映画の往年のファンからは酷評され、本作でライトナー夫人を演じたクリスタ・キャンベル(出演者の一人に無かったことにされるのは可哀想。無かったことにする必要が本作には感じられないので余計に)が製作して、『死霊のえじき』に忠実な再リメイク版が作られる事が決まっているほど、黒歴史な一作として扱われていますが、私は本作を大いに楽しめました。
本作が公開される一年前の2007年は劇場で鑑賞した『プラネット・テラーinグラインドハウス』、『ゾンビーノ』、『バイオハザード3』といったゾンビ物が個人的に大当たりで、「これ以上の作品は暫く現れないだろう」と思っていて、余程の事が無い限りはゾンビ物で驚いたり、夢中になるほど楽しめる作品は無いと予想していました。しかし、その予想を本作は覆し、続編を意識していない作り、全体が黄色に統一された鮮やかで薄気味悪さと不気味さがより強調された色調、シューティング・ゲームをプレイしているかのようなシンプルなガン・アクションとタフネス感と可愛さを併せ持ったミーナ・スヴァーリ(『アメリカン・ビューティー』の主役だった頃からは想像できないぐらい銃を構える姿がカッコいい。偶然にも同作で共演したソーラ・バーチは2009年に公開された『テラー・トレイン』に主演していましたね。本作も、それも名作ホラーのリメイク版なので、共通点が多いのが驚きです)扮する主人公、気弱だけれど憎めない新米を好演したスターク・サンズ、口は悪いけど、頼りになり、「現実世界がゾンビ・ウイルスに汚染されたとしても、こういう人と行動できれば生き延びられるかもしれない」と思わせるサラザール(主人公がサラなので、このネーミングはややこしいです)のキャラ、アクション・ホラーだけれども、姉弟の関係を描いたドラマチックな内容でもある話など魅力的な部分が多く、ロメロ作品のリメイクとして『ドーン・オブ・ザ・デッド』に続いて本作が二作目の出演となったヴィング・レイムスの登場とその存在感からは想像もつかないぐらいの早期退場など意外性もあり、本編そのものが1時間半と短く、勢いとテンポが失われずにノンストップで描かれ、多少はテンポの悪さや中弛みするのが当たり前なゾンビ物という印象を過去のモノにしているというのも良い点と言えます。
個人的に気に入っているシーンはゾンビ・パニックが起きた直後の通風孔でのサラ、バド、サラザールが移動するなかでの、ゾンビとのチェイスで、足を失って、動きが不安定でコマ撮りのようなカクカクとした動きで床を這いずり回り、しぶとい姿で動き回るゾンビと必死に逃げるサラたちの姿は、まるで、『ターミネーター(1984年)』のクライマックスを彷彿とさせ、チェイスとしては小さなモノで、ほんの数分と短い件ですが、とてもハラハラでき、この時にはゾンビの弱点も明らかになっていない(ただし、予告の時点でサラザールが「頭を撃ち抜けば倒せる」と言っている台詞が入っているので、それを観ていた場合には関係ありませんが)ので、ハラハラとドキドキの度合いが大きなシーンだと言えます。
本作に不満は全く無く、アクションを全面に押し出したゾンビ物のなかでは、公開から7年半が経過しても、本作を越える作品が現れず(近いのは『ザ・ホード-死霊の大群-(2010年)』です)、今も愛してやまない作品と言えますが、観る度につっこんでしまう事があります。それは本作の日本版劇場予告におけるニック・キャノンの扱いが悪すぎることで、本作が公開されるまでの間に既に『ドラムライン』等の代表作があるのに、公開の半年ほど前にマライア・キャリーと結婚(当時。現在は破局)した事の方が大きくなってしまい、本作の予告では“マライア・キャリーの新郎 ニック・キャノン”と紹介され、何だか、「今まで俳優じゃなかったのに、突然の大抜擢をされた」というように見えてしまい、これはキャノンが若手だった事や最大の話題がこれだったり、“木曜洋画劇場”風なノリでそのようにした可能性はありますが、いつ見ても、この扱いは可哀想だなと思えます。ただ、これによってゾンビ物の作品の予告のなかでは最も忘れられないので、インパクトは十分(これに次ぐインパクトがあるゾンビ物の予告はスティーヴン・セガール主演の『斬撃-ZANGEKI-』だと思います)だったという事でしょう。
アクションを全面に押し出したゾンビ物を観て、スカッとしたい方に本作をお薦めします。
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