ドラゴン・キングダム : 映画評論・批評
2008年7月15日更新
2008年7月26日より新宿ピカデリーほかにてロードショー
カンフー映画への夢と愛が詰まった2トップの初共演
「スピード・レーサー」のオリジナルに対する敬愛度には並々ならぬものがあったが、この夏にはもう1本、オタクの愛に満ち溢れた映画がある。「ドラゴン・キングダム」だ。
ジャッキー・チェンとジェット・リーという2トップの夢の初共演は、ただビッグスターが顔を並べただけのものではない。幼少の頃から武術学校で専門的に学んできた彼らの正確で美しいカンフーは、2人が闘うことで威力も魅力も倍増。まるで素晴らしいパートナーとダンスを踊っているかのような、レベルの高いアクションシーンを作り上げた。しかもそのアクションを振り付けたのが、ジャッキーの出世作「ドランク・モンキー/酔拳」の監督だったユエン・ウーピンなのだからたまらない。今では「マトリックス」などのアクション監督として名を馳せている彼が20数年ぶりにジャッキーと組み、長年封印されていた酔拳を復活。ジェット・リーもまた僧侶姿でデビュー作「少林寺」を彷彿とさせるなど、カンフー映画の伝説が次々に登場する。そしてキングダムのシーンで香港カンフー映画へのオマージュを捧げる一方、主人公が住む現代のボストンでは、デビッド・キャラダインやブルース・リーの世界観を繰り広げ、舞台を古代と現代に分けることで、ジャッキーらの伝統武術とアメリカ的なカンフー・アクションを1本の映画の中に両立させたのも見事。
ストーリーや人物設定は単純だが、ギュッと絞り込まれたエキスにはもうそれだけで十分なほど、カンフー映画への夢と愛が詰まっている。
(木村満里子)