落語娘のレビュー・感想・評価
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緋扇長屋
2008年公開作品
2度目の鑑賞
動画配信していないので今回もTSUTAYAでレンタル
比較的置いている店が多いのが救い
あくまでも比較的だが少なくとも近くのツタヤでは扱っていた
監督は『ボクの女に手を出すな』『シャコタン・ブギ』『櫻の園(1990)』『12人の優しい日本人』『コンセント』の中原俊
脚本は『必死剣鳥刺し』『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』『太陽の家』『みをつくし料理帖』『バイオレンスアクション』の江良至
粗筋
憧れの落語家三松家柿江に弟子入りを断られ対談企画で柿江邸を訪れていた三々亭平佐に拾われた形となった三々亭香須美
しかし彼女の師匠は落語仲間からも評判の悪い問題児の遊び人だった
ろくに稽古もつけてもらえず見習い生活を続け悶々とする香須美
そんなある日に平佐師匠がテレビ局の古閑由香里プロデューサーの持ち込み企画で禁断の噺「緋扇長屋」を寄席で披露することに
しかし緋扇長屋に関わった落語家は全て急死する呪われた話だった
落語コメディー
表情豊かなミムラと津川雅彦の老獪な芝居
一番の見せ場はやっぱり平佐が寄席で披露する緋扇長屋
桂二葉や蝶花楼桃花など著名な女性落語家は少数派ながらもそこそこいますけどまだまだ男尊女卑なんですかね
それは前座の話で真打になれば関係ないと思うんだけどどうでしょうね
笑点に選ばれたら話題にはなるがむしろ大火傷しそうだし普通に咄家やっていた方が無難な気はする
配役
三々亭香須美にミムラ(現:美村里江)
香須美の少女時代に藤本七海
香須美が弟子入り申し込むも断る落語家の三松家柿江に益岡徹
大日TVのプロデューサーの古閑由香里に伊藤かずえ
香須美の落研の後輩でスポーツ新聞記者の清水和也に森本亮治
余命わずかな香須美のおじの藤崎秀行に利重剛
落語家の桔梗家金雀にベンガル
落語家の上下家楽吉に大河内浩
落語家の紺々亭喜多楼に勝矢
落語家の椿家庵どんに花ヶ前浩一
落語家の蓮花亭笑佑に久保晶
平佐行きつけのソープランド男性従業員の神崎に安藤彰則
落語家の三松家順平太に若松力
香須美の後輩落語家の飄家志んじに高橋俊次
「緋扇長屋」が原因で亡くなった?落語家の芝川春太郎に金田龍之介
「緋扇長屋」が原因で亡くなった?落語家の竹花亭幸助に笑福亭純瓶
「緋扇長屋」に登場する扇屋「松葉屋」の若旦那で道楽が過ぎて父親に勘当された清司に佐藤大介
「緋扇長屋」に登場する長屋のマドンナ的存在で清司と相思相愛の関係になるお加世に河村春花
「緋扇長屋」の登場人物で金銭目的で勘当された清司を自分の長屋に住まわせているヤクザな捨五郎に武田秀臣
「緋扇長屋」に登場する清司がお熱になる吉原の花魁に園英子
「緋扇長屋」に登場する長屋でお加世と同居している高利貸しのおばの小梅に中村まり子
宮下ディレクターに尾関伸嗣
安藤厚生労働大臣に峰岸徹
評論家風の客になぎら健壱
インターネットカフェで香須美にマナーについて注意する謎の男に春風亭昇太
竹花亭幸助の妻の石田登志子に絵沢萠子
40年前の登志子に井上紀子
香須美の師匠で問題児の三々亭平佐に津川雅彦
語れば死ぬ?禁断の落語
呪われた噺・・・80年前に呪われたという“緋扇長屋”という落語を書いた噺家が心臓発作で寄席に向かう途中死んでしまった。そして40年前、その封印された噺を披露しようとした噺家も高座途中で死んでしまう。テレビ局はその禁断の噺に挑む落語家として、異端児である三々亭平左を選んだのだ。
ほとんど怪談である緋扇長屋。吉原通いを始めた若旦那がずるずると加代という花魁に熱をあげたが、彼女の後見人である高利貸し婆が勝手に妾話を進めてしまい、若旦那が遊び人にそそのかされて火事で殺そうと計画。しかし、火をつけたところ、その家にいたのが加代だったという内容だ。呪われることを恐れた平左はオチをトイレに落とし、創作で噺をまとめたため助かったという・・・どちらが落語なのかわかんないようなストーリー。
落語娘の成長物語であると同時に、平左と柿紅の仲直りの話。津川雅彦の落語も立派なものだが、ミムラの寿限無も最高。また、テレビ局プロデューサーの伊藤かずえも40を過ぎているけど美しい。津川雅彦にやられちゃうんじゃないかとハラハラしながら観た・・・
ミムラが好き
女の落語
近くのDVD屋に置いてない上、ウィキペディアも存在しないという希少?な映画。
ミムラファンということでずっと見たかった作品をテレビの放送でやっと見ることができた。
感想は・・・・・・・津川さんすげぇ・・・
終盤のシーンはもちろんだが終始師匠としての存在感を感じさせた。
プライドが高い益岡さん演じる三松家柿紅が崇めるだけある風格があった。
作品のテーマ、落語娘との名にあるように「女の落語」が、
恋や男社会での肩身の狭さなどから描かれていた。
特に話の鍵となる呪われた噺にもつながっていてまとまりがある。
その噺が純粋な語りでなくドラマを混ぜていることに賛否両論あるが、
私はこれでよかったと思う。
噺には霊が乗り移るだけの気迫が必要だが、
いくら津川さんでも本物の落語家のような語りをするのは無理だろう。
ドラマの中のばあちゃん(名前が分からないが)なんかの演技は素晴らしく
引き込まれる魅力があった。
ミムラは津川さんに比べ見せ場が少なかったが、
落語を愛する新米の女落語家をしっかりと演じてた。
落語があんまりうまくないのもちょうどいい感じだったと思う。
全体的にコミカルな感じで
CGが陳腐だったり、リアクションの表情がオーバーだったりしたが、
(呪われた落語のオチなんかも)
それもユーモラスな落語の映画ならではだろう。
ミムラ扮する女落語家の成長をもっと見たかったが
津川さんの迫力ある噺もあったし
落語映画として十分見ごたえのある作品だったと思う。
<追記>
基本的に新米の情けないシーンばかりだったが
啖呵を切るシーンなんかでミムラの魅力は十分に堪能できたので
その点からもよい作品だったと思う。
ミムラは「ビギナー」以来のファンなので
これからも期待して追っかけたいと思う。
大人向けのコメディです。
今も男尊女卑や先輩後輩の戒律が残る落語界に飛び込んだ女性が破天荒の師匠についたものだから起こるドタバタ物語。
破天荒を表す部分ではテレビ向きとは言えないところもあるけれど、後は主演のミムラが落語を熱演し安心して見られる単純なストーリー。
DVDにコメンタリーが無いのは残念。落語をあまりご存じでない方は特典ディスクにある落語マメ知識が参考になると思います。
笑いに勝ち負けは似あわねぇ
映画「落語娘」(中原俊監督)から。
俳優が、落語家の役をやるって難しいだろうなぁ、
台詞だけでなく、落語も覚えなきゃならないし、
なんといっても経験で覚える「間」なんかも、
それらしくみえなきゃならないんだから・・。
さて、選んだ一言は、津川雅彦さん扮する
主人公の師匠・三々亭平佐が、いろいろな場面で口にする
「人を楽しませるのに、高尚も何もない」や
「高尚もへったくれも、ありゃしない」を代表する言葉。
最近、落語の世界だけでなく、漫才やコントも含め、
「グランプリ」と称して、優劣を決めたがるが、
本来は「笑いに勝ち負けは似あわない」と私も思う。
人によって、その瞬間の感情も違うし、当然笑うつぼも違う。
単に、面白い、楽しい、それだけでいいじゃないか。
笑いまで、勝ち負け、順位をつけることに疑問を感じているから、
この一言が、輝いてみえた。
落語娘というよりもプチホラーに近い怪談話が枕の作品でした。オチも痛快!
11月公開の『櫻の園』は酷かったけれど、本作は落語好きな中原俊監督が芸の道の世界を細部までリアルに演出してくれており、見応えありました。落語家の話なので、落語が出来ないと始まりません。ミムラは二ッ目クラスの話だけど、『寿限無』は徹底練習したようで、かなりの早口で流暢に捲し立てるところはすごいと思いました。日活では3年間の女優としてのブランクを気にしていましたが、全く感じさせない熱演でした。
特に協会のリーダー的存在である三松家柿紅に、自分の師匠との縁切りを進められたときにきっぱり断ったときの啖呵が、いなせでよかったです。
ちなみに指導した柳家喬太郎師匠からは、「彼女こそ僕の一番弟子」とまで言わしめたそうです。努力家なんですね。
津川雅彦は、もう大看板の貫禄たっぷりの話芸を披露してくれました。あの語り口を聞いていて、ふと彼の監督作品『次郎長三国志』との共通点が浮かんできたのです。ちょっと早口でたたみ掛ける台詞回しは、長年の役者修業を積んだ自信のなせる技なのでしょう。
津川演じる平佐師匠の口癖は、芸というものは稽古を積めば出来るってもんじゃねぇということでした。芸というものは霊なんだというのです。ネタを語るのでなく、ネタに語らされている、乗り移られるようになってこその芸なんだというのですね。でも役者カンが効く俳優ってやっぱり天才肌なんでしょう。そういうところが津川本人にもあって、監督やっても素晴らしいものを作ってしまうだと感じました。
その点柿紅師匠は、努力家で厳格。平佐師匠とは好対照です。でもどんなに頑張っても、古典落語のコピーの範疇では、平佐師匠の自由闊達な芸風を越せなかったようです。私生活では、隙あらば弟子にソープ代をせしめようとする師匠に、愛想尽かしていた香寿美が、平佐師匠の実力と人間味に気がつくところが本作のポイントですね。落語で言えば人情噺になっていました。
ところで、噺家が余りにネタに「憑依」されると、命まで持って行かれてしまうという怖いエピソードが『緋扇長屋』の話にまつわる噺家の間の伝説が本作の枕になっています。一見滑稽無頭ですが、平佐師匠の語りにかかると真実味を帯びてきます。実際に挑戦した噺家が高座で死ぬくだりは、ちょっとしたホラー映画のようでした。
そして40年ぶりに『緋扇長屋』を高座に上げる平佐師匠にも魔の手が忍び寄ります。平佐師匠はどういう手で、ネタにこもった怨念から逃れることができたのか。ラストに思いもよらぬオチが用意されていました。へぇ~そうだったのと唸ってしまう、オチにぜひご注目を!(落ち着きませんであいすいません)
『緋扇長屋』の演目は、ほとんどが時代劇として再現されており、落語が苦手な人でも劇中劇として楽しめます。
最後に本作では、芸の世界の男尊女卑ぶりも徹底して描かれています。
厳格な柿紅師匠が、「あんた、女のすし職人が握った寿司がうまいと思うかい」という問いかけは、客商売である以上一理はあるでしょう。ただ、劇中にも描かれるセクハラの酷さは目に余ります。
香寿美の偉いところは、それでも気丈に兄弟子たちの世話を黙々とこなし、ついには柿紅師匠を認めさせるところでした。
『噺家は男じゃなきゃいけねぇなんていうのは、俗を知らない独りよがりの思い込みよ』という平佐師匠はバンカラさばかりでなく、人の心の機微を知った優しさの持ち主でもあったのでしようね。
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