「単なる銀行強盗の話が、国家レベルのスキャンダルに巻き込まれていく複雑なストーリー。主人公の危機的状況を一気に逆転するラストが痛快です。」バンク・ジョブ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
単なる銀行強盗の話が、国家レベルのスキャンダルに巻き込まれていく複雑なストーリー。主人公の危機的状況を一気に逆転するラストが痛快です。
まずは手短に冒頭の三題噺。
いきなりモロッコのリゾート地で、肌を露わに浅瀬で戯れる男女のグループが登場し、そのままベットイン。濃厚なからみが始まるや、窓の外では、その痴態を隠し撮りする男の姿が。
いきなり場面が変わって、主人公テリーが登場。荒々しい借金取りを追い返すところに経営が苦しいテリーの状況が暗示されました。
そして、またまた画面がいきなり変わって、英国諜報機関とおぼしき幹部のたちが密談している場。よく聞くと、黒人解放を掲げてつつも、その実麻薬王の裏の顔を持つマルコムXの逮捕が話し合われていました。
彼は、王室スキャンダルの証拠写真を掴んでいて、起訴されてもまんまと逃げおおせていたのです。
この何の関係もなさそうな3つの話が重なっていく様が、すこぶる小気味よくストーリーにのめり込んでいきました。
メインは銀行強盗の話なのです。ただ狙った先が貸金庫だったことから、ストーリーはそこに預けられていたマルコム一味の犯罪組織の情報はもちろん、一味とつながる娼婦館での政府高官スキャンダル、娼婦館と警察の汚職、イギリス政府が隠したい王室の秘密などなどがまるでパンドラの箱を開けたように、テリーたちの強盗団を追及しだして、絶体絶命に陥いるところは、かなり練り込まれたシナリオのセンスを感じさせてくれました。 強盗のシーンでは、一味の無線連絡が筒抜けで、警察がどの銀行が狙われているかロンドン中の銀行をしらみつぶしに捜査していく様は、ハラハラの連続でした。強盗団の動きとの交互の描写が巧みで、彼らがいる銀行に警察がいよいよ乗り込んでいくときは、どうなるのかと手に汗握ったほどです。
やがて強盗団の一人が犯罪組織に捕まり、面はわれ、テリーたちは八方ふさがりとなります。この危機的状況を一気に逆転するラストが痛快です。
しかもこの話の大半が実話に基づいていると言うから、驚きです。事実は映画より奇なりですね。
バットマンよりも低音な台詞回しで語りかける主演ジェイソン・ステイサムが渋い!ラストはアクションもばっちり決めてくれます。
ラストに向けて、複雑に絡んだ話を収斂させていく展開は、全く飽きさせませんでした。
同じ強盗もの『オーシャン』シリーズのスタッフに爪の垢を飲ませたくなるような傑作です。上映館は少ないので、DVDになったらぜひご覧ください。
追伸
本当に銀行強盗は行われ、なぜか映画と同じく途中からマスコミは事件のことを、ぷっつり報道しなくなったそうです。
実話とは信じがたい話ですね。