劇場公開日 2008年11月1日

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「ベタな笑いとシリアスに人生を語りかけるバランスが絶妙。脚本鈴木おさむの新妻賛歌なのだぁ!」ハンサム★スーツ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ベタな笑いとシリアスに人生を語りかけるバランスが絶妙。脚本鈴木おさむの新妻賛歌なのだぁ!

2008年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ドタバタしたベタな笑いの波状攻撃の中に、思わず人生を考えさせるシリアスな場面が絶妙に入り混じった、傑作です。ラストには、誰も思いつかない大どんでん返しになっていて、『アフタースクール』の内田けんじ監督を彷彿させるくらい驚きがありました。中身は内緒ですが(-_-;)

 谷原章介と塚地武雅とがクロスするところが特に可笑しかったです。谷原が口パクで演技して、台詞は塚地が語るというもの。そのときの谷原のブサイクモードになりきった演技が忘れません。会場は爆笑の渦に包まれました。

 紳士服の青山と全面タイアップしていて、作品のなかで実名で店舗が登場し、「あなたの人生を変えるスーツがあります。」というコピーのパンフレットまで登場します。ひょっとして、ハンサムスーツは青山で販売しているかもしれませんよ。

 お客に豚郎とあだ名されている琢郎のブサイクさには、迫力すら感じさせるものがありました。どんな人にも口には出さないけれど、外見上の悩みはあるものです。意外にかっこいい人でも、結構コンプレックスを持っているものです。だから観客の多くが琢郎の気持ちがよくわかるし、きっと自分が琢郎になった気分で見てしまうでしょう。
 憧れの寛子ちゃんに振られたときの琢郎のブサイクという思い込みは、すごく共感できました。でも、寛子ちゃんの断った理由がどうもそうではなさそうと匂わせるところが、巧みだなと思いました。そのための複線として琢郎に寛子ちゃんが初めて会ったときの思い出が描かれており、寛子ちゃんの琢郎への思いが暗示されているのです。

 琢郎を振った寛子ちゃんの変わりに、入店する大島美幸演ずる店員は、美人とはいえないけれど、仕事はできて、気配り最高の人でした。
 店員を見ていて段々大島美幸が素敵に見えるようになりました。実は、脚本を書いているのは、新婚ホヤホヤの彼女の旦那さま、鈴木おさむ。
 きつと鈴木はプライベートで見せる大島のいい妻ぶりを、おののけ見たいにこの本であてがきしているのだろうと思います。そんな鈴木だから、「当事者」として観客に問い掛けているのが本作なのでしょう。人は見かけの良さばかりが全てなのかと。

 確かに杏仁のような美貌へ変身したいという願望は、否定しがたいものがあります。でも、琢郎のようにほんとにそれを手に入れたからといって幸福になれるのでしょうか。その問いかけは、ストーリーのなかで次第にはっきりと考えさせられるものがありました。

流山の小地蔵