「幻影の中に見るアイゼンハイムのソフィアに寄せる想い」幻影師アイゼンハイム talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
幻影の中に見るアイゼンハイムのソフィアに寄せる想い
令和の今になってしまえば、パソコンでのAI画像処理が普遍化したり、インターネットが爆発的に普及したりして、日常ではあり得ないようなフェイク画像が巷に溢れるようになったせいなのでしょうか。
いつの間にかマジック(奇術)の公演を見かけることがなくなってしまいました。
往時は、大みそかともなれば「世界のマジック・ショー」のようなタイトルで2時間もの、3時間もののテレビ特番が競うように放送されていたことを、今や懐かしくさえ、思い起こされます。
そんな「仮想世界」を描くような本作では、皇太子に追い詰められるほどに先鋭化していく幻影師アイゼンハイムこと、アブラモウィッツのトリック(奇術)が本作のミステリアスさ(幻影さ加減?)を半端なく加速していく展開に、思わず引き込まれます。
そして遂には、言ってみれば「逆恨み」ともいうべき状況で殺害されてしまったソフィアの幻影を舞台に登場させたことで、当局に介入の口実(社会かく乱罪の成立)を与えてしまう―。
その時の、消えゆくソフィアの幻影を見守るアイゼンハイムの切なそうな表情が、評論子には脳裏に焼き付いて忘れられない一本になりました。
その時の彼の脳裏には、ソフィアに寄せる真摯な想いが去来していたであろうことは、疑う余地のないこととも思われます。
佳作としての評価が適切な一本だったとも思います。
〈映画のことば〉
「すべて幻影だ。」
「幻影の中に真実がある。」
(追記)
本作は、「その世界の雰囲気を超えて、異常性すら感じられる」という映画.comレビュアーのCape Godさんのレビューに食指を動かされ、NHKのBS放送から録画してそのままになっていた媒体で鑑賞することになったものです。
まさに、的確なレビューで評論子の関心を引き、佳作に巡り合わせていただいたCape Godさんに、末尾ながらハンドルネームを記して、お礼に代えたいと思います。