「美しい背景の暗がりに浮かび上がる魔術の妖しさ」幻影師アイゼンハイム Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
美しい背景の暗がりに浮かび上がる魔術の妖しさ
総合:75点
ストーリー: 65
キャスト: 70
演出: 80
ビジュアル: 80
音楽: 65
映像は衣装も含めてかなり美しく撮られているだけでなく、その時代の雰囲気が良く出ている。また主人公だけでなく威厳があるけどいかにも傲慢で残忍な皇太子や、有能だけど出世のために自分の感情を押し殺して生きる警察署長の演技も存在感がある。
だが例えば剣の魔術とかここまですごい魔術が出来ないだろうということは思うし、ヒロインを仮死状態にするような薬品が登場なんて都合が良すぎるだろうとか思うのだが、それらはとりあえず目をつぶらないと駄目か。でもあまりに魔術がすごくて最早超能力並みになってくると、どんな障害でもその超能力で解決するみたいになってしまう。
それと物語上気になった点がある。皇太子は暴力を振るったり女を殺したというような話もあるほど素行も悪いし皇帝退位計画を進めていたりして悪者ではあるのだが、あくまで噂話の域を出てなくてノートンには真実を知る由もないこと。また歴史上数多く行われた行為での1つである皇帝に退位をさせることについても、それをしたからといってそれが社会にとって悪いとも言い切れないだろう。
ノートンが愛を貫こうとして皇太子が殺人を犯したことをほのめかし彼をはめ、その結果として彼は自殺することになった。また警察署長も職を失い彼の人生は大きく狂ってしまった。自分の幸せのための計画がもたらしたものだが、果たして彼はこの結末を予想していたのか、そしてどう受け止めるのだろうか、それとも自分の幸せのためには他人のことなどたいして気にもしないのだろうか。ノートンは他人の人生を犠牲にし国家の命運をも自分のために変えてしまった。見終わった後にそのあたりはしっくりこなかった。