「見えざるところに真実が!」幻影師アイゼンハイム kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
見えざるところに真実が!
爽快でありながら驚くべきラスト・・・などとラジオ番組での映画評を耳にしてしまったのが失敗。伏線も絶妙なんだからソレしかないだろう!と、見えざるところに真実があることがわかってしまった。かと言って、19世紀ヨーロッパの美術や俳優の上手さ(エドワード・ノートン、ポール・ジアマッティ、ルーファス・シーウェル)のおかげで評価が下がるものではない。特に良かったのがイリュージョンのステージ。もちろん実際に大がかりなマジックを行ってるわけじゃないのに、なぜか映画の中の観客と同化してしまうような錯覚に・・・とにかく撮り方が上手いんです。
基本的にはエドワード・ノートン扮するイリュージョニスト・アイゼンハイムとジェシカ・ビール演ずる公爵令嬢ソフィの恋物語に、ハプスブルグ家皇太子レオポルド(シーウェル)が絡んでくる三角関係。平民と貴族という身分違いという壁。しかもライバルが皇太子ときたもんだから、さあ大変だ。やらしいことに、皇太子はアイゼンハイムのトリックを暴きたくてしょうがない・・・
マジシャンの基礎的なネタに関しては皇太子もウール警部(ジアマッティ)も知っているほどで、19世紀末の当時にもイリュージョン人気があったんだと教えてくれる。だけど、鏡を使ったネタやホログラムのような幻影は観客にとっては全く未知の世界。死者の魂を呼び戻すショーにはファンタジーを超えて、どことなく霊的な世紀末思想さえうかがえるほど。見える部分には真実がない!と言われても小市民は信じちゃう悲しさ・・・
身分違いの恋。大人になってからよりも、2人の幼少期がノスタルジックで心地よいのです。ソフィの「わたしを消して」という願いをかなえるために10数年も幻影師の修行をしたんだろうなぁ。そしてウール警部だって肉屋の息子という設定で、アイゼンハイムを陥れるように命令されても自分と同じ平民なので本気になれない心情が見事に表現されていました。
ちなみに実際に起こったマイヤーリング事件を参考にして・・・などとあるのですが、どこが似ているのかわかりませんでした・・・