きつねと私の12か月のレビュー・感想・評価
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【一年掛けて、狐と仲良くなった少女が学んだ事。”好きと、所有する事は違う。”フレンチアルプスの麓の豊かな自然、様々な野生動物が作品に彩りを添えています。】
ー リュック・ジャケ監督だから、時間を掛けて撮影したんだろうなあ。-
◆感想
・警戒心の強い狐を、一年掛けて良く少女リラは、懐かせたなあというのが正直な感想である。
・森の動物たち、熊、針鼠、鷲や、洞窟、岩を抉って流れる川。豊かな自然が描かれている。
■リラは幼いが故に、テトゥ(オチビチャン)と名付けた狐を、好きになり、常に思い、仲良くなったからこそ、自分の部屋に入れたのであろう。
が、テトゥは閉じこめられたと驚き、リラの2階にある部屋の窓を突き破って、外に出ようとするが・・。
<ラスト、男の子の親になった優しい顔をしたリラが幼き息子に話しをし、その子も母と同じように笛を吹くのである。
リュック・ジャケ監督は昔から、野生動物の描き方が巧いなあ。>
エキノコックス!
「アルプスの少女ハイジ」を思い出すくらい、怖いもの知らずの超自然児!といった感じの10歳の少女リラ(ブリュノー)。さすがに狼に出会ったときには逃げてしまい、骨折まで負ってしまったが、“山の親父”と呼んでいた熊に遭遇してもビビらない少女。キツネの本も買ってもらい、生態も学んだうえで捜し歩き、徐々に近づいてゆくことに成功。夏になると、きつねをティトゥと名付け、一緒に遊んだりした。ある日、一緒に鍾乳洞に入って歩くうちに夜になり遭難してしまった。
アルプスのふもと。野山を駆け回るリラ。数多くの動物が登場するし、前半ではドキュメンタリーに小さなストーリーを挿入しただけと感じたが、手を振れるまでになると、さすがに『皇帝ペンギン』のリュック・ジャケ監督は作り方がうますぎると言わざるを得ない。そして、ティトゥが狼に襲われるというシーンでは、見る者の心を揺さぶり続ける・・・
夏休みの終盤、リラはティトゥを自分の家に招待する。おっかなびっくりのティトゥはそろりそろりと2階にあるリラの部屋へ。扉をしめると急に息苦しくなったティトゥは部屋の中で暴れまくり、最後にはガラス窓へと飛び込んで行った・・・死んだ?
室内犬でさえも見知らぬ密室に連れ込まれると情緒不安定となる。キツネは所詮、人間のペットにはできない動物なのだ。結局は死ななかったティトゥだったが、その事件以来、リラの前に姿を現わすことはなかった。
大人になったリラが息子にお話を聞かせてあげてるといった設定。きつねは人間のペットにはできないと教えてあげるのだ。日本では『キタキツネ物語』、『きつね』、『子ぎつねヘレン』なんて作品もあって、エキノコックスの怖さを教えてくれるのだが、可愛いからと言ってむやみにペットにはできないもんなのだな・・・きつねに限らず。
圧倒的な映像美に加えて、人間の愚かさをさりげなく観客に痛みとしてを感じさせることで、いつまでも記憶に残る作品。
リュック・ジャケ監督作品だけに、ドキュメンタリーに近い作品。何しろ登場人物は、少女リラとあとラストに少し大人になったリラとその息子が出てくるくらいで、ほとんどが野生のキツネが主役。
警戒心が強いキツネの生態に密着した撮影をしているところがすごいです。
巣ごもりして子育てしているところや、山猫に追われて逃げ込んだ巣穴で一安心している姿をタイムリーに撮影しているのです。どうやって逃げ込む先を見越してカメラをセットしたのでしょうね。
さらに、しつこくキツネを追いかけるリラの執念が実って、何とキツネ一家とリラは、すっかりお友達になってしまうのです。
リラが体を触れようとしてもキツネ一家の面々は逃げようとしないしないで、リラにじゃれつきます。それだけでなく、リラが道に迷って野宿してしまったときなど一晩ずっと寄り添っていたのです。まるでペットの犬みたいに。何とも信じがたい映像でした。
でもそんな関係になるまでには、リラも相当待ちぼうけを喰わされました。何しろキツネという生き物は、気まぐれなんです。リラのそばにプイと現れて、しばらく彼女のご主人様気取りであちこち「先導」したあげく、突如消えてしまうのです。この繰り返し。
対するリラも結構強引なところもありました。
餌でキツネをおびき寄せるられることを覚えたリラは、何とたこ糸の先に餌をくくりつけ、文字通り『キツネ釣り』を試すのでした。
見事にキツネは釣られてしまうのですが、そこは運動能力の高いキツネの身上。あっという間に糸を引きちぎってトンヅラします。
一生懸命キツネを釣ろうとするリラの奮闘ぶりが可笑しかったです。
あと熊と遭遇するシーンやオオカミの群れに囲まれたキツネを助けるために、リラがオオカミと対峙するシーンでは、どうやって安全に撮影したのか驚きました。
『アース』と比べてもドラマ性がいまいち弱く単調気味と感じました。ただキツネはとても可愛く、感情移入してしまいます。またジャケ監督ならではの映像美は随所に散りばめられていました。
特に冒頭の秋のシーンでは、山一面が紅葉でキツネ色に染まります。空もまた夕日でキツネ色に。そして、キツネの毛も夕日の逆行を受けてキツネ色に輝いていました。
キツネ色づくしのオープニングでしたね。
淡々としたドラマながら、ラストに母親になったリラが息子に語る「好きになると所有しようとしてしまう」というメッセージにはジンときましたね。
彼女自身が、キツネを身近に置こうと拘束したため、辛い別れを招いてしまいました。これって人間界でもよくあることですね。トリモチのような愛情なんて、苦しみにしか過ぎないでしょう。
ジャケ監督は、人間の愚かさをさりげなく観客に痛みを感じさせることで、いつまでも記憶に残る作品に仕立て上げました。映画のように是非親子で見て語り合ってほしい作品です。
さて、本編の映像で、キツネが丸くなるというのは、FIREFOXのロゴ上の表現だけと思い込んでいました。しかし、餌をとるときキツネは小躍りして、体を丸くしジャンプするようです。あなたもブラウザーが「キツネ党」なら、ぜひ生身のキツネの生態をこの作品で触れてほしいものです。
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