「人生は大冒険。」カールじいさんの空飛ぶ家 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
人生は大冒険。
フリーパスポートの最終日、せっかくだから3D字幕で観た。
さらにそのあと、別の日に2Dの吹き替え版でも観てみた。
結果、どちらも遜色なく素晴らしかった。声優陣申し分なし!
今回のピクサーは冒頭の短編からかなり出来が良かった。
あのコウノトリ?がとった行動にウルっとしないのはムリだ。
立て続けに本編…カールとエリー夫婦の出逢いから別れを
一気に10分足らずで見せてしまうのだが、これがまた凄い。
さすがP・ドクター。ストーリー構成の巧さが今回も活きている。
このじいさんの冒険が始まるのは、実はそのあとからだが、
観客はすでにそこで一本観終えた充実感を味わってしまう…
今年はなんだかひねくれじいさんの映画が多い気がするが、
これを観て(映画好きは)とある作品が浮かばないだろうか。
イーストウッド卿の「グラン・トリノ」そのアニメ版かと思った^^;
人生の終盤、偏屈じいさんの心を開くのはアジア系の少年、
似てるといえば「扉をたたく人」もそんな作品だったか。。
そして彼は少年の為に、残りの人生を捧げ尽くすことになる。
今回の場合は、たまたま?ということもあるのだろうが、
幼い頃からの夢も、子供を授かる夢も叶わなかったカールが
やっと重い腰を上げて愛妻との約束を果たそうとした矢先に
とんだ珍客がバンバン訪れる…(爆)まったく人生ってやつは。
私はこのラッセルという少年の造型がとても気に入った。
おじゃま虫よろしくカールに付きまとい、旅を破綻させる^^;
しかしまるで憎めない。どころか可愛い。ゴムボールみたい。
南米に着けば鳥にまで好かれる。よほど親から愛情を受けて
育ったのだろうと思ったのだが(そうでないとはいわないが…)
彼にも寂しさと背中合わせの秘密があったのだ。その些細な
願いを聞いて、ついに偏屈じいさんの心が少しずつ動き出す。
著名な冒険家に憧れて、妻と共に夢を追いかけたあの頃。
誰もがそうだろうと思うが、子供の頃の夢が叶う方が少ない。
それでも老齢で亡くなる時に「ちきしょう!」と思わないのは、
振り返った人生そのものが大冒険で楽しかったからだろう。
ここは男性と女性とで違うのかもしれないが^^;
目的を達成することにどこまでも目を向ける男性に比べて、
目的も大切だが、そこまでの過程を重視するのが女性。
たぶんエリーは人生に少しの後悔もなく旅立ったはずである。
大好きな人と一緒に人生を旅することが出来たのだから。
憧れの冒険家があの末路…というのがややアメリカ的だが^^;
ピクサーが傘下となった某会社の元重役たちもあんな感じ?
変化を恐れない、他人を遠ざけない、意見をちゃんと聞く、
自らの価値観に縛られてすべてを追い込んでしまう独裁者を
かる~く(そして残酷に)描いているんだろうか…。少し怖いな。
カールにとってはムンツが反面教師となったのだが。。
それにしても声優陣はどちらも本当に見事だった。
エリーの子供時代を演ったのは、監督の娘さんだろうか??
生え変わりの隙っ歯から漏れる空気感まで台詞に活きていた^^;
ラッセルの声も最高。ピクサーは(例外もあるが)声優選びが巧い。
どうしよう~。久々に傑作を観てしまった感じ。
ありがとう、フレドリクセンさん。
(チョコとテニスボールの様々な使い道を発見。限られますが^^;)