「凡作ではないが佳作とも言えず」ブラインドネス そふつさんの映画レビュー(感想・評価)
凡作ではないが佳作とも言えず
観賞後に原作者がノーベル賞受賞作家だと知ったり、監督が割と実力派として知られる人だと知ったが、観賞時にはそれら情報を得ていなかったので、先入観なくそのままの感想を述べたい。
作品内容はいわゆる不条理文学モノであって、SFはおろかサスペンスですらない。
こういった形而上の哲学性を題材とした作品にリアリティを付与しようとした痕跡が見られるが、まずこの取り組みには失敗していると感じた。
そもそも観念的に描写することでのみ成立する内容なので(登場人物たちにはほぼ全編を通じて「映像」が存在しないため)、現実味を帯びさせるには聴覚描写の他に匂いや温度、触覚、味覚といった要素を具体的に映像とする必要があっただろう。
このリアリティの欠如が作品の持つ観念性の哲学を、観客に対してチープに感じさせてしまっている。
このことによって、中盤以降の展開がどうにもお粗末に感じられるのだ。
物語の結論よりも先ず、この作品そのものが「映画よりは演劇に近い」ということを感じた。
少なからず、見えないということを描くことにはこの作品は失敗しているのかもしれない。
作品全体を通して描きたかったものが何となく分かるだけに、惜しいと思った。
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