「1万円超えるタクシー料金は「万収」と言います・・・タクドラ用語」接吻 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
1万円超えるタクシー料金は「万収」と言います・・・タクドラ用語
世間から無視され続けてきた女を描く。一家惨殺事件の起こる前、京子(小池)は同僚にタクシー代を持つから残業を代わってくれと頼まれ、翌日にはそのレシートを同僚に見せるが1万2千円超え。おいしい客だ~などと思っていたのも束の間、高すぎてもらえないと最初から覚悟していたみたいで、レシートを捨てちゃった・・・なぜかとても印象に残るエピソード(笑)。
テレビに映る坂口(豊川)の表情だけで自分と同じ人間だと理解する京子。差し入れを繰り返し、手紙のやりとりも始まった。事実だけは認め、後は黙秘を続ける坂口の裁判は死刑の方向に向かい、面会できるようになると、坂口との結婚を希望する。刑が確定すると面会できなくなるという理由もあったのだろうが、真意は衝撃の結末を考えればおのずとわかる。
とにかくユニークな設定だ。獄中結婚という話は聞いたことあるけど、死刑になることがわかってる男と一般人女性というのは超レアなことだろう。シンパシーなんて言葉じゃ喩えられないほど京子の深層心理は重いのだ。そして、坂口は人を殺しているが自分は殺していないという不釣り合いが、どこかで爆発するのだと予感させる。
終盤にはホラーの展開になるのかと思わせる。殺した家族の亡霊に悩まされる坂口。死体を前にバースデーソングを不気味に歌うのに対し、ようやく仕切りの無い部屋での面会を許された京子がそれを反復する。ああ、ここで初めて二人の共通項が揃ってきたかと思わせた途端、長谷川(仲村)に渡してあったプレゼントを開いて坂口の胸にナイフを突き刺すのだった。ここで“接吻”するんだろうと思っていたら、次は「一人じゃ死刑にならない」と長谷川に襲いかかるがナイフははずれ・・・長谷川に濃厚な接吻をする京子。
展開も見事だけど、接吻の意味がどうもわからない。謎を残したままいきなりエンディング、しかもエンディング時にタイトルバック「接吻」が・・・その謎といえば、終盤にじわじわと音楽が鳴り響く様子は『SAW』に似ていた!