劇場公開日 2008年3月22日

  • 予告編を見る

「全3話完結もののトレンディドラマといった方がいいレベル」Sweet Rain 死神の精度 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0全3話完結もののトレンディドラマといった方がいいレベル

2008年3月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 サイトの情報では、物語は1985年、2007年、2028年の3つの時代を舞台に展開しているとのこと。複線の張り方が余りに唐突なのでドラマのあらすじを事前に調べておいた方が、理解しやすいと思います。
 特に2028年のシーンは、ストーリー上のオチをつけるところで、3時代を強引に繋いでいます。でも時間の変化したことを全く演出していないので、突如場面転換したとしか見えませんでした。

 デスノートで注目された死神ではありますが、この作品では死神らしさが全然ありません。それが売りなんでしょうけれど、もう少し世界観を示して欲しいなぁと思いました。何らかの神秘さがなければ、余りに死神さんたちが俗人過ぎて、未知の存在が登場するという雰囲気がないのです。
 彼らにしては死は日常のものだけれど、この世の人間にとって死は、厳かなもの。死を扱うには、演出がお手軽すぎます。

 上司の黒い犬もいまいち存在理由が不明。ラストの物語上何の存在価値もないロボット女も要らないと思いました。

 原作のファンや金城ファン以外にはあまりお勧めできません。全3話完結もののトレンディドラマといった方がいいレベルでしょう。

 日本語で語る金城武は、たどたどしさもなくまぁよかったのではないでしょうか。時々の時代の世情に疎い死神ゆえに、「ナンパ」も「難破」と言い返してしまう千葉。そんな相手にはオジンギャグと勘違いされてしまう天然ボケぶりにピッタリの演技でした。
 2枚目俳優が天然ボケやると、とぼけているところがチャーミング見えて、金城ファンには、受けると思いますよ。

1話目の小西真奈美さんは薄幸さをよく演技していましたね。さすがに「醜い」とまでは見えませんでしたが、歌手として輝いている写真とそれ以前のOL時代では、印象が全然違っていました。

2話目のヤクザの藤田に千葉が、あんた自分を信じられるかいと問うたところがよかったですね。藤田は頷くます。それに比べて、捕まった舎弟の石田は、助けに来たら殺されると叫びます。でもその心には自分自身も兄貴分も信じていない弱さが潜んでいたのですね。
 藤田のいつ死んでもいいという覚悟が、千葉の「判定」も動かし、奇跡を起こさせました。人を活かしてしまうのは死神の仕事のひとつでしょうかねぇ。

3話目の富司純子の演技も魅せてくれました。彼女は『明日への遺言』での無言の演技も注目されています。本作品では、死に臨して思い残すところなしという心境をよく演じていました。空が晴れるくらいの晴れ晴れさでしたね。
きっと晩年を迎えている彼女の本心から出た台詞ではないでしょうか。その言葉を聞いてすごく心が爽やかになれました。
死ぬことの当たり前さではなく、生きることの大切さを知らせてくれた演技でした。

 人はいつかは死にます。死神たちも何度もそう言い合います。
 しかし、人は死を知りません。
 永遠に生き続けるものと錯覚しています。
 多くの人は死んでのちも、自らの死を認めたがりません。
 だから死神の仕事があるのです。

 死を知らせるのが役目なら、
 小地蔵もまた死神の仲間といえましょう。
 やがて皆さんのところへ必ずお迎えに参りますぅ。

流山の小地蔵