「「悪い人生じゃなかったと思うのはいつだって男性よ」」アウェイ・フロム・ハー 君を想う えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)
「悪い人生じゃなかったと思うのはいつだって男性よ」
カナダの豊かな自然に囲まれたログハウスで40年以上、仲睦まじく連れ添ってきたアンダーソン夫妻。ある日、妻のフィオーナにアルツハイマーの兆候が現れはじめる。
何とも切ない大人のラブストーリー。
「私の中のあなた」という作品でも感じたが、好き・嫌いや良い・悪いといった価値観は相対的なものでしかない。それを超えた絶対的なものを西欧ではたぶん「愛」と名付けていて、この作品はそういった意味での「愛」について描かれている。
痴呆に蝕まれていくフィオーナ役のジュリー・クリスティが呟く、「悪い人生じゃなかったと思うのはいつだって男性よ」という科白に象徴される、女性監督ならではの感性をがっちりと受け止め、とてつもなく美しくキュートな演技を見せる。
夫役のゴードン・ピンセントの慈しみ・嫉妬・罪悪などがない交ぜになった寡黙な演技に、40年にわたって積み重ねてきた夫婦の絆の重みと責任が巧みに表現されている。
しかし切ない。
いかに大切に想っているとはいえ、人生の先も見えているとはいえ、ラストの様な選択を緩やかに決断できるだろうか。愛のためにAway From Herできるだろうか。
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